上場申請書から見えるFacebookの企業文化
とうとうFacebookが待望の上場申請。申請書の「マーク・ザッカーバーグからの手紙」の中で語られる社会変革への熱い想いと、彼らの企業文化である「ザ・ハッカー・ウェイ」の重要性に注目しました。
著者プロフィール:石塚しのぶ
ダイナ・サーチ、インク代表取締役。1972年南カリフォルニア大学修士課程卒業。米国企業で職歴を積んだ後、1982年にダイナ・サーチ、インクを設立。以来、ロサンゼルスを拠点に、日米間ビジネスのコンサルティング業に従事している。著書に「『顧客』の時代がやってきた!『売れる仕組み』に革命が起きる(インプレス・コミュニケーションズ)」「ザッポスの奇跡 改訂版(廣済堂)」がある。
2月1日、Facebookが待望の上場申請を行いました。Web上に公開された申請書類にさらりと目を通してみましたが、中でも特に印象に残ったのが、若き創設者であり最高経営責任者であるマーク・ザッカーバーグからの手紙です。
世界中の人々がつながり、自己を自由に表現しあうことを可能にするツールを提供することによって「社会を変える」。この実に大胆ともとれる声明文から、生活者、そしてFacebookのコラボレーター(デベロッパーや広告主)にとって、史上最強のソーシャル・プラットフォームを構築するのだという彼の意気込みを感じ取ることができました。
もう一歩踏み込んで言えば、人と人との間の「SHARE(共有)」ということが、今日の社会を支える中核的な価値創造活動になる中で、Facebookの目指すところ(ザッカーバーグは「ソーシャル・ミッション」という言葉を繰り返し使っている)が明確に打ち出されていたと思います。
また、もう1つ私の注意をひいたのは、申請書の中で、ザッカーバーグがFacebookの企業文化についてかなりの熱を込めて語っているということです。「ザ・ハッカー・ウェイ」と呼ばれるFacebookのカルチャーが今後の成功のカギであり、その一方で、「スピーディな実践」を重んじ、「短期的利益に目を向けない」という価値観が仇になる可能性もあると「リスク要因」のセクションで述べているところが、非常に興味深いと思いました。
「企業文化はどのような戦略にも勝る」というのは、一説によれば、かのピーター・ドラッカーの言葉だとも言われていて、米国ではかなり以前からよく引用されるフレーズですが、「企業組織として、どんな文化を作るのか」「どのようなミッションを掲げるのか」、そして「働く人たちと、どのような価値観を共有していくのか」ということが、今日、経営上の大きな命題としてとらえられているのだということをザッカーバーグの手紙から感じました。
この若き会社、Facebookが、これからどのように世の中を変えていくのか、1人の生活者としての期待とビジネスの研究者としての好奇心に胸を躍らせています。
史上最大のIPOに?
……ところで、数値好きな方々のためにあえて付記しておくと、Facebookの時価総額は1000億ドルにも及ぶのではないかと言われていて、資金調達額(ターゲット)は50億ドル。これが実現すると、2004年に行われたグーグルの株式公開時の調達額(16億7000万ドル)を大きく上回り、史上最大のIPOとして歴史に名を残すことになります。
「売り上げに対する評価額が高すぎるのでは……」という声もありますが、今年第2四半期に予定されている同社の株式公開が米インターネット業界にとって十分すぎるほどの景気付けにつながることはほぼ間違いありません。(石塚しのぶ)
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