金融市場は好調だが……世界経済の懸念点は?:藤田正美の時事日想(2/2 ページ)
年初から500円以上も上昇している日経平均株価。ユーロ危機が一段落したことで、世界の株式市場も好調だ。しかし、中国経済の減速やホルムズ海峡封鎖など懸念すべきことは、まだまだ残っている。
「石油ショック」の懸念
それに世界経済へ大きな影響を与える可能性があるのが、イラン情勢だろう。このところイラン側からは強硬な発言が相次いでいる。駐ロシア・イラン大使は「もしイランに対して武力攻撃が加えられれば、米軍は世界各地で反撃を受ける」という主旨の発言をした。さらにアフマディネジャド大統領は「今週中にも核開発について新たな進展を発表する」と予告しており、その内容が注目されている。
もしこの発表がイスラエルにとって重大な脅威になるようだと、イスラエルがイランの各施設を攻撃するかもしれない。実際、パネッタ米国防長官は、今年4〜6月にイスラエルが攻撃に踏み切る可能性があると分析していると伝えられた。1981年、イスラエル空軍はF16とF15、合計14機でイラクのオシラク原子炉を爆撃し、破壊した。ヨルダンやサウジアラビアの領空を「侵犯」してまでも作戦を敢行したのは有名な話である。
イスラエルがイランの各施設を攻撃するようなことになれば、イランはホルムズ海峡の封鎖という手段に訴えざるをえない。そうなったら2012年は「石油ショック」の年として刻まれることになる。原油相場が暴騰するのは間違いないし、日本の場合、ホルムズ海峡を通過する原油の量は全輸入量の8割程度に及ぶため、必要量が確保できないという問題も生じる。
こうした状況を考えると、現在の株高を喜ぶのは時期尚早かもしれない。まして日本の場合は、これに膨大な国や地方自治体の借金という大問題がある。消費税をどこまで引き上げれば財政再建できるのか、それについて民主党政権はまったく展望を示すことができないままだ。「次の世代に負担を先送りしてはならない」という言葉はよく聞くが、それでは1000兆円という借金はいつから減らせるのか、その工程表は定かではない。
「4年以内に70%」という首都直下型地震の確率は50%以下に「下方修正」されたが、日本の債務危機はまさに「いまそこにある危機」なのである。
関連記事
- 何が日本の政治改革を妨げているのか
日本に限らず、世界でも「政治の劣化」がささやかれるようになっている。私たちが選択している民主主義が機能しなくなっているのはなぜなのだろうか。 - なぜ原子力災害対策本部の議事録がないのか
NHKが政府に原子力災害対策本部で行われた議論の議事録の公開を請求したところ、議事録が作成されていなかったことが判明した。一国の政策を決める場で、記録を取らないのはコンプライアンス違反だと、筆者は指摘する。 - 今、民主党がやるべきことは何か
12月9日に閉会した臨時国会。法案38本のうち13本が成立したにすぎず、成立率34%は民主党政権になって最低である。TPP交渉への参加問題、消費税増税問題、社会保障の改革問題など、懸案が山積しているが、民主党がまずやるべきことは何なのだろうか。 - 藤田正美の時事日想バックナンバー
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.