ポイントサービスは衰退する百貨店を救えるか?(2/2 ページ)
史上最大の窮地に立たされる米国の老舗百貨店シアーズ。打開策は顧客データマイニングとモバイル・テクノロジーを駆使したポイント・プログラムだというが……。
愛情はお金では買えない
ちょっと脇道にそれたが、この話の中で私が興味を引かれたのはポイントプログラムの内容より何より、そもそも「ポイントプログラムで会社を救済できるのか?」ということだ。
答えは否。もっと言えば「いかに最新のテクノロジーを駆使したポイントプログラムをもってしても、根本的に壊れてしまったビジネス(ブランド)を救済することはできない」ということだ。
今どき、ポイントプログラムはどの会社でも展開しているし、似たようなポイントプログラムはどの会社にでもできる。また、買い手の側にも、長引く不況の中で「安く買えるんだったらとりあえず登録しておく」メンタリティがまん延している。だから、ポイントプログラムへの登録者数を稼ぐのはあまり問題ではないのだ。グルーポンやその猿真似的ビジネスが大流行する(した)のはそういった理由からである。でもそれも結局は長続きしなかった。数にだまされてはいけない。
「小売の基本に帰るべきだ」とあるアナリストは言う。私もそう思う。悲しいかな、「シアーズ」と聞いて、私の知る米国人の多くはどういうイメージを抱くか。古く、さびれた、ぼろぼろの店舗。暗い店内に、やる気のない店員。どう考えても、「週末に楽しくお買い物」したい場所ではない。
米国ではポイントプログラムは一般的に「ロイヤルティプログラム」と称されるが、「ロイヤルティ」とは本来「忠誠心、愛情、きずな」という意味である。皮肉なことに、十中八九間違いなく、ポイントプログラムを理由にリピート購入する顧客にロイヤルティは期待できない。そういう顧客は、特典を取り上げたら最後、よそに行ってしまう。顧客から真のロイヤルティを得ている企業は、ロイヤルティプログラムなど必要ないのである。それは、アップルのような会社をみれば歴然だ。
愛情はお金では買えない。顧客に愛されるお店を作るにはどうすべきか。シアーズは、今一度問い直すべき時に来ているのではないだろうか。(石塚しのぶ)
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