Apple、Facebook、Quoraで働いた上杉周作氏が語る、これからのプロダクトデザイン:New Order ポスト・ジョブズ時代の新ルール(3/4 ページ)
Apple、Facebook、Quoraとシリコンバレーの名立たる企業で活躍してきた24歳デザイナー・上杉周作氏。「今までのデザインは、見た目重視の二次的なものだった。でもこれからは、そこに『経験』や『機能性』を掛け合わせた三次元的なものでなくてはならない」と話す。
目的達成のための決まりを作る。デザインとはその工程の全て
上杉 Quoraで仕事をした時も、コメント機能を「可能」から「芸術」に高めようとしたことがありました。Quoraでは、コメントに対し返信をすることができます。ひと昔前のCGI掲示板みたいですね。
コメントに対する返信は、すべて一度に表示されると読みにくいので、ボタンをクリックすれば表示する形にしています。最初はほかのサイトと同じように、そのボタンを「このコメントに対する5人の返信を見る」というボタンにしました。しかし、ユーザーに「もっとコメントしたい」と思わせるためには、改良の余地があると考えました。
試行錯誤を繰り返した結果、5人の中で最初に返信した人のコメントを抜粋して、「○○さんは『わたしは違うと思います』と言い、さらにほかに4人がコメントしました」という文字をボタンに入れたんです。
具体的な文章があれば、さらに読みたい、クリックしたいと思わせることができる。また、一番に返信すると抜粋が表示されるので、いち早く返信するモチベーションを高めることにもつながります。
「コメントの数を増やす」といったQuoraの目的を達成するために、ここはこういう文言にするとか、このボタンを左に置くとか、こちらを大きくしてあちらを小さくするとか、いろいろな決まりを何個も何個も作っていく。ゼロからそこにたどり着くまでの全工程がデザインなんです。
最終的には人の目に映る平面に落とし込まれるんですが、デザインとは、見えている灯りだけでなく、灯りと自分との間も含めた3次元の部分。むしろその奥行きこそが、一番重要だと思っています。
これ以上足し引きする必要がなく、このままの形でずっと残っていくものが芸術だとすれば、そこには揺るぎない決まりがあるはず。その決まりを作る工程こそがデザインなんです。 まだ足し引きする余地があるのなら、芸術ではないのです。
実績のある優秀なデザイナーは、「これは芸術になった!」と経験的に分かるそうです。そういう芸術を作れるデザイナーは、これからもっと必要になります。
それは競争が激しいから。ユーザーの声を聞き、エンジニアにどんどん新しい機能を作らせて、不可能を可能にするだけでは、もう差別化できないからです。日本も、今はまだ米国と同じラインに立ってはいないかもしれないけど、デザイン勝負になるのは時間の問題でしょう。
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