Apple、Facebook、Quoraで働いた上杉周作氏が語る、これからのプロダクトデザイン:New Order ポスト・ジョブズ時代の新ルール(4/4 ページ)
Apple、Facebook、Quoraとシリコンバレーの名立たる企業で活躍してきた24歳デザイナー・上杉周作氏。「今までのデザインは、見た目重視の二次的なものだった。でもこれからは、そこに『経験』や『機能性』を掛け合わせた三次元的なものでなくてはならない」と話す。
ジョブズが教えてくれたこと
――上杉さんのようなプロダクトデザイナーや、サービスを作るエンジニアが「可能」を「芸術」に高めるためには、どう考え、どう行動すれば良いのでしょうか?
上杉 可能を芸術に高めるには何が必要か。ジョブズに絡めるなら、ジョナサン・アイブがジョブズの追悼イベントで行ったスピーチにヒントがあるような気がします。
彼はこう言いました。「ジョブズがやったことは、美しさ、純粋さ、絶対に妥協しないことの勝利だ」と。
このセリフの中にあった、「giving a damn(絶対に妥協しない)」という言葉が、今でも特に印象に残っています。
デザイナーとしてQuoraに入って、私が一番学んだのも「giving a damn」でした。最初に言われたのは、「エンジニアであることを捨てろ」。「自分はエンジニアだから」という言いわけをせず、責任を持って、アイデンティティを賭けたデザインを追求していけということです。
そういう自分に対する厳しさが、可能を芸術に高めるために必要なのかと思います。私は元エンジニアだったのですが、私の知るエンジニアの多くの方には、そういう「絶対に妥協しない」ストイックさが備わっていると思います。
例えばサービスのAPIを設計する時など、利用者が使いやすいAPIにするにはとても深く考える必要があります。ドキュメントを読まなくても使えるAPIを作るために、妥協は許されません。FacebookはグラフAPIという形で、開発者は「頂点と辺」だけでAPIの概要を理解できるようになりましたが、そこに達するまで何度もAPIの改変が行われました。
この姿勢は、デザインでもとても重要です。ユーザーが説明書を読まないで使えるUIを作るのにも、また妥協は許されないのです。InstagramのUIも、ユーザーは「写真を撮ってフィルターをかける」ことだけを学べばいいわけです。APIの設計と、UIの設計は、経験上とても似ています。グラフィックデザインやタイポグラフィーも、その延長線上にあります。
だから私は、技術をよく知っていて、妥協しないエンジニア出身者が本気でデザインに向かえば、芸術を作れる素晴らしいデザイナーになると思っています。
「エンジニアtype」
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