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コラム

鉄道からバス転換で浮かび上がる、ローカル線の現実杉山淳一の時事日想(4/5 ページ)

JR東日本は岩泉線のバス転換方針を発表した。鉄道復旧を望む地元は落胆し、やがて反発へ向かうだろう。プレスリリースにはローカル鉄道の厳しい現実を示しているが、奇跡の復活はあるのだろうか。

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名松線は地元の負担で復活予定

 例えば、岩泉線と同様に被災し、一時はバス転換と提案されながらも、鉄道復活が決まった路線がある。三重県の名松線である。起点は三重県松阪市、紀勢本線の松坂駅。終点は三重県津市の伊勢奥津駅。距離は43.5キロメートル。このうち、家城駅―伊勢奥津駅間の17.7キロメートルがバス代行運転となっている。原因は2009年の台風被害だ。

名松線。青が運行区間、赤が不通区間(出典:Google マップ)

 名松線も岩泉線と同じく1984(昭和59)年に廃止対象路線となったが、やはり岩泉線と同じく周辺道路の整備がないとして廃止を免除された。

 この名松線末端区間の場合も、線路だけ復旧しても、いつ新たな災害・事故が起きてもおかしくない。安全を保証できないとして、JR東海によりバス転換が表明された。バス代行区間の輸送人員は1日当たり平均90人。地元は鉄道復旧を要望した。復旧費用は明らかにされなかったものの、2011年に三重県、津市、松阪市、JR東海が協定を締結し、2016年を目標に鉄道を復旧させる。また、復旧後も危険箇所の整備は地元自治体が担うという。


名松線の被災状況。自治体の支援で2016年度目標で復活が決まった(出典:JR東海)

 岩泉線の復旧については、この名松線の前例が効いてくるだろう。もっとも、対象となる区間の距離、輸送人員、復旧費用などの事情が異なる。最大の違いは、宮古市が東日本大震災で被災しており、こちらの復旧費用も巨額で、岩泉線にどれだけ予算を回せるか、という問題がある。終点の岩泉町にしても、まだ豪雨被害から復旧できていない。

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