運転士の失神・発作……列車は大丈夫なのか:杉山淳一の時事日想(4/4 ページ)
京都でクルマが交差点に突入し、8人が死亡する事故が起きた。ドライバーが病気で失神していた可能性もあるという。鉄道の世界はワンマンカーが増えているが、もし運転士が運転中に意識を失えばどうなるのか。
クルマにもデッドマンシステムは必要かも
では、自動車はどうだろうか。カメラを用いて衝突回避や自動走行を行う運転支援システムを搭載しているクルマが出てきたが、まだ十分とは言えない。もし走行中に病気で失神したら、安全を確保することはできるのだろうか。
運転中の失神は、病気がなければ安心……というとそうでもない。実は私も一度、交差点で停車中に「寝落ち」を経験した。かなり疲れていたし寝不足でもあったが、どうしてもクルマで出かける用事があった。もちろん本来はこんな状態で運転してはいけない。その時は「自分だけは大丈夫」という過信があった。用事が終わって安心した帰り道、赤信号でブレーキを踏んで待っていた。気づいた時、クルマがクリープ現象でそろり……そろり……と前に出ていた。
幸い、左右方向の車道までは進まずにブレーキを踏んだが、横断歩道を私のクルマが塞ぐ形になっていた。私のクルマをのぞき込んだ歩行者の厳しい表情が忘れられない。「寝落ち」は明らかな過失だ。しかし、脳卒中や心筋梗塞など、自分でも気づかぬ病気で気を失うという可能性はある。つまり、運転中の失神は誰にでも起こりうる。
国土交通省の「第9次交通安全基本計画(平成23年度〜平成27年度)」の策定にあたっては、日本自動車工業会の意見書でデッドマンシステムに触れていた。鉄道とは状況が違うとして、技術開発の必要性は指摘されたものの、同計画には盛り込まれていない。
ハンドル、アクセル、ブレーキ……それらに一定時間の操作がない場合、ブレーキをかける。そういう仕組みはクルマでは難しいだろうか。運転する楽しみを奪い、自由度が制限される。それがかえって危険な場合もあるかもしれない。しかし、せめてバスや貨物用自動車には「デッドマンシステム」が必要ではないか。
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