世界のIT業界の動きが分かる街、バンガロールを訪れてみた:遠藤諭の「コンテンツ消費とデジタル」論(4/4 ページ)
世界のIT企業の多くが拠点を置いている、インド南部の都市バンガロール。現地でソニーに勤める武鑓行雄さんによると、「バンガロールにいれば、世界の動きが手に取るように分かる」という。
バンガロールといえば、世界的に衝撃を与えたトーマス・フリードマンの『フラット化する世界』(伏見威蕃訳、日本経済新聞社刊)の書き出しに出てくるのは、まさにここに巨大キャンパスを構えるインフォシスというインドのIT企業である。同社を訪ねた『ニューヨークタイムズ』のコラムニストに対して、同社の当時のCEOナンダン・ニレカニが「競争の世界は平らになりつつある」と語ったというのが書名のヒントになった。
ネットによって、インドにある企業であろうが米国内の企業であろうが、同じフィールドで戦える環境が生まれてきている。
私がインド滞在中、オバマ大統領が「米国で雇用が失われ、景気の停滞が続いているのは、インドに仕事を奪われたためだ」と発言したことが、ニュースで大々的に伝えられていた(世界はまさに、インフォシスのCEOやフリードマンが言ったようにフラット化してしまったのだ)。ネットによるフラット化は、米国や日本のような国にはあまり良い結果を生まないという話なのだが、幸いなことに日本はその前段階にも達していない。
むしろ、今の日本は国内の小さなことしか見ていないことが問題なのだ。製品やサービスの機能やデザインが、日本国内でしか通用しないものになっている現状はガラパゴス化と呼ばれる。ガラパゴスからはい出そうとしても、企業内の事情もあるし、具体的な手がかりもないという意見もあるかもしれない。しかし、実のところガラパゴスの対極にあるのがフラット化だと気付くべきなのだ。バンガロールに来るだけでスッと雲が晴れてグローバルが見える。
武鑓さんのアイデアでいいなと思ったのは、バンガロールと羽田を直行便で結び、サンフランシスコと結ぶハブにするというものだ。
世界を目指すと言っている企業は、フィリピンに語学留学なんかしていないで、バンガロールに移って仕事をしながら英語を覚えるほうが効率が良いという意見もあってよいだろう。世界の感覚をつかめれば、日本企業もグローバルでやっていけるはずで、「IT企業のバンガロール進出特別優待制度」のようなものを国が用意するのはどうか(逆にアニメ制作のような日本が先行するものは、海外でやるべきではない)。
確かに今の世界を1枚の絵に描き出していくと、これくらいバンガロールの必然性がそろっているというのは本当なのだと思う。だからこそ、世界中のIT企業がインドに来ている。
ついでながら、南インド料理はサラサラ系のカレーが中心なので、ヘルシーで日本人の口に合うというのもメリットといえる(今のところ正式な日本食レストランはバンガロールに2軒しかないが)。街に活力があるから日本人も元気になるし、気候は年間を通じて25〜35度と、インドの軽井沢と言われるほど過ごしやすい。女性は、南インドならではの「アーユルヴェーダ」などの楽しみもあります。
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