コラム
鉄道自殺は増えていない。自殺全体が増えている:杉山淳一の時事日想(5/5 ページ)
鉄道は、時に人命を奪う。それは事故であったり、自殺であったりする。バスやクルマもしかり、船や飛行機もしかり。鉄道事故は技術の進歩や危険を潜む手順の見直しで防げる。では、鉄道自殺はどうしたら防げるだろうか。
ホームドア、ホーム柵の設置
鉄道自殺について、鉄道会社がさまざまな取り組みをしている。ひとつはホームドア、ホーム柵の設置である。出来心に向かう死にとって、この壁はとても大きいはずだ。その効果については統計データがあり、以前、私が書いたコラム『なぜ駅にホームドアの設置が進まないのか』で紹介させていただいた。
もうひとつは、JRや一部の私鉄が実施している「青色LED照明」である。青い光には心を落ち着かせる効果があって、自殺を思い止めるかもしれないという。こちらの効果を測定したデータがないが、山手線の全駅に設置されているし、大手私鉄の一部の踏切にも見かける。なにもしないより、少しでも可能性を見いだせそうならやったほうがいい。
私からは、死ぬ前に旅を勧めたい。憂んだ日常から離れ、普段とは違う体験をして、もういちど考えていただきたい。行った先がこの世であるかぎり、元の場所に帰らなくたっていいんだから。
編集部よりお知らせ
現在、Business Media 誠では杉山淳一氏と共同通信の大塚圭一郎記者による対談『どうなる? 鉄道の未来』を連載中です。こちらも合わせてお楽しみください。
→“LCC攻勢”が強まれば、鉄道会社はどうなるのか【第2回】
→「鉄道ファン=良い客じゃない」――この構図にしたのは、誰か【第3回】
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