豊かな国は貧しい国を援助するべきか――ユーロをめぐる難問:藤田正美の時事日想(2/2 ページ)
欧州危機でギリシャのユーロ離脱が現実の問題として語られるようになっている。今までのようにユーロ圏を維持するためには何が必要か。それは富を豊かなところから貧しいところに移行する仕組みである。
EUのさらなる統一の進化につながるか
英エコノミスト誌の最新号は、「The Choice(選択)」と題する記事で「ばらばらになるか、スーパー国家か」とし、「スーパー国家になるほうがみじめではない」と書いた(ちなみに英エコノミスト誌や同じく英フィナンシャルタイムズ紙はEUの統合を先に進めることに懐疑的な立場を鮮明にしている)。
最近話題になっているユーロ共同債というのも、このスーパー国家論の1つと考えてもよさそうだ。ユーロ共同債とは、これまでは各国ばらばらに行っていた債券発行(国の借金)を共同で行って、それを各国に配分しようというのである。ECB(欧州中央銀行)によって金融政策は一本化しているが、各国の財政政策はばらばらであるのを、借金だけでも一本化できないかというアイデアだ。
当然、疑問もわく。もしギリシャが安い(例えばドイツ並みの)金利で借金できるとしたら、どんどん借金をしてしまうのではないか。そうなったら財政規律も何もあったものではない。ちなみにギリシャは最悪のころは10年物国債で利回りが30%を超えていたし、ドイツの現在の10年物国債の利回りは1%台の半ばよりちょっと低い。
そうすると結局はEUは統一通貨からトランスファーユニオンに進み、すぐにフィスカルユニオン(財政同盟)へと進むというのが「歴史の流れ」ということになる。もちろんその時には、今の状態の「国家主権(ソブリニティ)」はなくなるというか、大きく変質することは間違いない。逆に言うと、ドイツやフランスといった強国が、ある意味「主権を放棄」しないと進まない話だ。EUがこの方向で進んだ場合、英国が名誉ある孤立を選ぶのかどうかは分からないが、少なくともキャメロン政権はこの構想に積極的ではない。
もしギリシャやスペインなどの債務問題が、EUのさらなる統一の進化という形で実を結べば、それは雨降って地固まることになるのだろう。第二次大戦が終わってすぐに始まった欧州統合への動きが、果たしてさらに進むことになるのかどうか、今年の欧州情勢は危機というだけでなく、目が離せないということになりそうだ。
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