今日が人生最後の日だとしたら? “人生の有限感”が生き方を変える:ちきりんの“社会派”で行こう!(2/2 ページ)
多くの起業家が持つという“人生の有限感”。「人間、いつ死ぬか分からない」と感じることによって、逆に不安がなくなり、アクセルを全開にして、進みたい道を進めるようになるということです。
もし今日が人生最後の日だとしたら
70歳や80歳になるまで死を意識せず生きていけることが、1つの幸せな人生のパターンであることは否定しません。そういう人生が与えられていたら、それはそれで素直に喜ぶべきでしょう。
同時に、若いうちにこの人生の有限感を手に入れると、生き方が大きく変わる、というのもまた1つの肯定的なイベントなんじゃないかと、ちきりんは思っています。
いつ死ぬか分からない、人生はいつまで続くか分からない。そういう意識が人を生き急がせ、くだらない世の中の常識に汲々(きゅうきゅう)と従う生き方に立ち向かう原動力となるのです。何となく過ぎていく日常は、あたかもいつまでも永久に続くかに思えます。でも実際は、終わりは突然(そして当然)やってきます。
スタンフォード大学の卒業祝賀スピーチで、スティーブ・ジョブズ氏は「もし今日が人生最後の日だとしたら、今日やる予定のことを私は本当にやりたいだろうか?」と問いました。「命が今日までしかなくても、今の生活を続けるか?」と。
スティーブ・ジョブズ氏のスタンフォード大学卒業祝賀スピーチ
フランスの女流作家、フランソワーズ・サガン氏は若くして小説が大ヒットし、大金持ちになりました。当然のように彼女の周りにはさまざまな思惑の人が集まります。良識ある大人たちは彼女に忠告しました。「付き合う人を選ぶべきだ。あなたの名声とお金にしか興味のない人と付き合うべきではない。あなたはだまされている。そのうちきっとひどい目にあうだろう」と。
彼女は答えます。「たとえそういうことが起こって、眠れないほどつらくて悲しい日が週に3日あったとしても、うれしくて楽しくて眠れない日が1日でもあれば、私はそういう人生の方を選ぶでしょう」と。
ほかの作家の「人生の傍観者になるな。自分の人生の舞台を、観客席からぼーっと見ていてはいけない。舞台に上がれ、演じるのだ」という文章も記憶に残っています。
人生の有限感を早い時期に手に入れるのは決して悪いことではありません。だけど、中途半端な時期に手に入れるくらいなら、いっそ最後までそんなものとは出会わない方が幸せかもしれません。誰かの人生ではなく、自分の人生を生きること。周りにどう見られるかではなく、自分がやってみたい人生を送ること。それだけが重要なことなのです。
そんじゃーね。
『社会派ちきりんの世界を歩いて考えよう!』(大和書房刊)
ちきりんさんによる新刊『社会派ちきりんの世界を歩いて考えよう!』が5月19日に発売されました。
崩壊前のソビエト連邦から東南アジア、アフリカまで、数十カ国を旅したちきりんさん。世界を旅しながら、考えたことをまとめています。ちきりんさんによる紹介エントリはこちら(「PR)世界を歩くと、ホントにいろいろ考える……」)
著者プロフィール:ちきりん
兵庫県出身。バブル最盛期に証券会社で働く。米国の大学院への留学を経て外資系企業に勤務。2010年秋に退職し“働かない人生”を謳歌中。崩壊前のソビエト連邦など、これまでに約50カ国を旅している。2005年春から“おちゃらけ社会派”と称してブログを開始。著書に『自分のアタマで考えよう』『ゆるく考えよう 人生を100倍ラクにする思考法』がある。Twitterアカウントは「@InsideCHIKIRIN」。
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