「入社2年目の若者」が新型水着を開発、どのように?:窪田順生の時事日想(2/4 ページ)
仕事では「経験」がものを言う場面もあれば、その「経験」によって新しい発想がでない、なんてこともある。時と場合によっては「素人」だからこそみえることがある。アシックスが五輪代表に提供している水着はまさしくそんな一例だ。
水着メーカーに大きな影響を与えた「レーザー・レーサーショック」
この「レーザー・レーサーショック」は選手たちだけではなく、水着メーカー業界に大きな影響を与えた。
FINAはメーカーに、素材はすべて「布」、全身タイツのように全身を締め付けるようなものもNGと定めたのである。要するに、「海パン」的なアナログ時代へ逆行せよ、とお達しをだしたのだ。
これに驚いたのが、「打倒レーザー・レーサー」で開発をすすめていた各メーカーだ。日本の「アシックス」もその中の1社だ。
2009年、新型水着開発の命をうけた「アシックススポーツ研究所」の森洋人研究員(28)は当時をこう振り返る。
「当時の水着開発は時代に逆行しているようなスタンスでしたからね。素材から構造までゼロからのスタートでした。私的には入社して最初の仕事ですから」
森さんがアシックスに入社したのは2008年。大学院で動作分析を学んできたとはいえ、新人研修を終えたばかりの社会人2年目だ。いきなり大抜擢されたわけだから、きっと学生時代は名うてのスイマー……でもないらしい。
「学生時代はずっとバスケットボールをやっていたので、水泳も正直なところみなさんと同じで、学校のプールぐらいしかやったことがありませんでした」
ははーん、ハイテク技術競争をしなくてもいいということで、ヤケクソになったんだろと思うかもしれないがそうではない。「ゼロ」から新しい水着を開発するには、彼のような人材の視点が必要だったのである。
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