コラム
“記事コピー”は日常茶飯事……マスコミの根っこに潜む闇とは:相場英雄の時事日想(3/3 ページ)
「記者が記事を書くときに、コピペをするなんて信じられない」……そう感じる読者も多いのでは。しかし、内実はちょっと違う。時事通信社の一連のコピペ騒動を例に、マスコミの内実に紹介する。
このような状態をひと言で表すとしたらこうなる……「横並び」だ。
記者や取材チームで調べ上げた独自ネタでもない限り、デスクは他社の書いたものを気にする。いや、自社の記者よりも他社の原稿を信じる向きさえ存在する。デスクという職種は、記者の上司ではあるが、編集局や報道局の中にあっては局次長や局長から常にチェックされる中間管理職だ。
「他紙や他局がこう書いているのに、ウチはなぜこのトーンなんだ?」とやり込められる機会が多いため、現場記者にプレッシャーをかけてしまう、という悪しき慣習があるのだ。
トラブルや嫌な思いをしたくない現場の記者は、他社の原稿を横目に、同じような無難な記事を書く、という事態に追い込まれるわけだ。
マスコミは、他社の不手際やスキャンダルにとりわけ手厳しい業界だ。だが、私が見たところ、今回の「時事/ワシントン共同電」への扱いはほとんどが短いベタ記事扱いにとどまっている。
ここからは私の想像だが、自らも脛(すね)に傷があるため、他社を強く叩けない、という事情が潜んでいるのではないか。
極論すれば、マスコミ業界は読者や視聴者ではなく、身内のために記事を書いていると言い換えることもできる。コピペ問題は、マスコミ内部の横並び意識を体現したものともいえる。
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