「アラブの春」と「AKB48」に見る、影響力の変化:ソーシャルインフルエンス(3/3 ページ)
大規模な民主化運動「アラブの春」と「AKB48」。全く次元の違う領域だが、「影響力の変化」という視点で見れば、ともにこの時代からこその事象といえる。2つの事例を紹介しながら、影響力がどのように変化していったのかを見ていこう。
影響力のスピード
最後に「影響力のスピード」。30年以上の長期独裁政権が、たった数カ月で崩壊することになったアラブの春は、まさに影響力の行使される速度が高まったことを証明してくれる。情報流通インフラが飛躍的に向上したことに加え、個人が与える影響もスピードアップした。アラブの春では、グーグルの中近東地区幹部でブロガーのワエル・ゴニム氏が訴えた「ムバラク政権打倒」に呼応し、カイロ中心部に20万人が集結した。
瞬く間に国民的アイドルとなったAKB48も、この影響スピードの変化を味方につけて成功した。とりわけ2011年後半以降、スピードアップの装置として機能しているのが、グーグルプラス上で展開を始めた「AKB48 Now on Google+」だ。とくに秋元氏とファンの距離はさらに縮まり、結果として情報伝播と意思決定のスピードも高まっている。
いかがだろう。地球の逆側で、そしてまったく次元の違う領域で起こった2つのムーブメント。ちょっと、対比させる事例としては極端すぎたかもしれない(笑)。しかし、だ。「影響力の変化」という観点で見れば、ともにこの時代だからこその事象といえる。いずれにせよ(そして望むにせよ望まぬにせよ)、影響の与え方が変化した時代では、ブームやムーブメントの起き方も、このように変化していくのだ。
(つづく)
著者プロフィール:
池田紀行
株式会社トライバルメディアハウス代表取締役社長。マイクロソフト、ユニバーサル・スタジオ・ジャパン、Z会などのソーシャルメディアマーケティングを手掛ける。近著『キズナのマーケティング』(アスキー新書)。
本田哲也
ブルーカレント・ジャパン株式会社代表取締役。米フライシュマン・ヒラード上級副社長兼シニアパートナー。国内外の大手メーカーなどを中心に戦略PRの実績多数。近著『新版 戦略PR 空気をつくる。世論で売る。』(アスキー新書)。
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