原発事故の“愚かさ”を、どのように表現すればいいのか:さっぱり分からなかった、3.11報道(3)(4/4 ページ)
福島第一原発の事故で、破壊された一番の財産は「コミュニティ」なのかもしれない。住民は仮設住宅に移って、地元とのつながりが絶たれた。さらに放射能被害を巡っては、「敵」「味方」の対立が生まれてしまったのだ。
烏賀陽:国土を失った民が、どんどん離散していくというのが今の状況。かつてのユダヤ人、パレスチナ人とどこがどう違うのか。国内で15万人難民が発生して家に帰れないというのは、明治維新以来、いや、日本の歴史にはないのでは。
東京にいると、そういう現実がすべて消毒されてしまう。無毒化されてしまう。マスコミが蒸留しちゃうんですよ。現実の持つ猥雑物を濾過してしまうので、リアリティがない。だから読者が実感できないんです。苦しんでいる人々が現実に存在するっていうことを。そういうところに、私は非常にフラストレーションを感じています。
相場:ほとんど聞こえてきませんよね。NHKが特集をやっていましたが。
烏賀陽:確かにNHKはがんばっていますが、それはNHK教育の人たち。本流では出世できず、「『ニュースウォッチ9』はあきらめろ」と言われた人が一番良い番組作ってる(笑)。
相場:私ができることといえば、「震災は終わった」「復興ももう果たした」と思っている人たちに、現実を知ってもらうこと。
烏賀陽:大切なことです。
(つづく)
2人のプロフィール
烏賀陽弘道(うがや・ひろみち)
1963年、京都市生まれ。1986年に京都大学経済学部を卒業し、朝日新聞社記者になる。三重県津支局、愛知県岡崎支局、名古屋本社社会部を経て、1991年から2001年まで『アエラ』編集部記者。 1992年にコロンビア大学修士課程に自費留学し、国際安全保障論(核戦略)で修士課程を修了。1998年から1999年までニューヨークに駐在。 2003年に退社しフリーランス。著書に『「朝日」ともあろうものが。 』(河出文庫)、『報道の脳死』(新潮社)、『福島 飯舘村の四季』(双葉社)などがある。UGAYA JOURNALISM SCHOOL、ウガヤジャーナル、Twitterアカウント:@hirougaya
相場英雄(あいば・ひでお)
1967年新潟県生まれ。1989年時事通信社入社、経済速報メディアの編集に携わったあと、1995年から日銀金融記者クラブで外為、金利、デリバティブ問題などを担当。その後兜記者クラブで外資系金融機関、株式市況を担当。2005年、『デフォルト(債務不履行)』(角川文庫)で第2回ダイヤモンド経済小説大賞を受賞、作家デビュー。2006年末に同社退社、執筆活動に。著書に『震える牛』(小学館)などのほか、漫画原作『フラグマン』(小学館ビッグコミックオリジナル増刊)連載。ブログ:「相場英雄の酩酊日記」、Twitterアカウント:@aibahideo
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