28歳までのキャリアは“勢い”、29歳からのキャリアは“意志”(2/2 ページ)
50歳での顔がその人の内実を表すように、50歳でのキャリアもその人のそれまでの仕事観・働き様を表すものとなる。それをより良いものとするには、どんなことが重要になるのだろうか。
職業人生で求められることとは
何十年と続く職業人生を航海に例えるなら、次の3つが求められる。
- 自分という船を強く性能良く造ること
- ぶれないコンパス(羅針盤)を持つこと
- 地図を持ち、そこに目的地を描くこと
1番目は、つまり知識・技能・経済力をどう身につけていくかという「自立」の問題である。2番目は、働く上での主義・信条・哲学・価値といったものをどう築き、どう自分を方向付けしていくかという「自律」の問題になる。そして3番目は、自分の仕事に意味を与え、どんな目的に向かって自分自身を導いていくかという「自導」の問題である。
20代での最優先課題は船をきちんと造ること、すなわち「自立」だから分かりやすいし、取り組みもしやすい。根気があれば何とかなる。
しかし、30代以降に求められる「自律」や「自導」の問題は、決して一筋縄ではいかない作業となる。
自らの価値観を真っ当に醸成し、ぶれないコンパスを持つこと。中長期の視野に立って創造的意志を起こし、自分が目指す方向性や像を地図として描くこと。それと同時に、そこからの逆算で不足する知識や技能を新たに習得して、船を補強すること――これらは、もはや「自分の仕事観」なしには解決できない問題である。
世の中には、知識本やハウツー本・成功本が数多くある。しかし、自分に仕事観を作らない状態では、これらの本に翻弄されるだけになる。常にそういう類のものを読んでいないと落ち着かない、あるいは、玉石混交の中から良いものを判別できないといったことだ。
仕事観を作ることで初めて、知識・技能・ハウツー情報に「頼る・振り回される」から、「生かす・取捨選択できる」へと変わることができる。
また、もっと重要なことは、良い仕事観を作れば、良い仕事観を持った人たちに引き寄せられ、良い仕事チャンスに恵まれるようになること。そうした中でコンパスが作られ、地図に目的地が描けるようになってもくる。20代終わりから30代にかけてこの回路に入ることこそ、その年代にいる働き手が得るべき最重要のものである。
すべてのビジネスパーソンに問いたい。
- 就職時の勢いに任せて、いつしか仕事・職業人生を考えることがおざなりになっていないか?
- 船の細かな性能向上(=知識・技能習得)ばかりに気を取られて、コンパスを作ること、地図を持ち目的地を描くことを忘れていないか?
- 社内・社外を問わず、仕事観を共有できる人々(=同志)と出会っているだろうか?
経営者・上司・人事の方々にも問いたい。
- ひとりひとりの働き手が、自らのコンパスを醸成できるよう、また地図に目的地を描けるよう刺激しているか? 対話しているか?
- あなたの組織という港には、性能はそこそこ良いが、コンパスを持たず、目的地を描くこともできずに、大海原を渡っていけない船がたくさん停泊しているのではないか?(村山昇)
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