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「世界には利潤追求のビジネスしかないのが問題」――ノーベル平和賞ムハマド・ユヌス氏(3/3 ページ)

社会的な問題の解決を事業ととらえ、行政や慈善活動に頼らず、ビジネスとして実現してきたバングラデシュのグラミン銀行創設者ムハマド・ユヌス氏。その功績が認められ、2006年にノーベル平和賞を受賞したが、彼は現在の社会についてどのような思いを抱いているのだろうか。

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利潤を追求するビジネスしかないことが問題

ユヌス 世界が抱えている問題は、1つだけしかビジネスの業態がないことです。すなわり、利潤を追求するものだけです。ですから、お金中心で世界が回っているという考え方を作ってしまいました。そしていつもお金もうけにこだわるようになり、お金をもうけるためにお金をもうけるという考え方しかしなくなりました。人間はお金もうけのロボットではないのです。お金もうけのロボットで人生を終えるのではなく、もっと大きな可能性があることを認識するべきです。

 経済学者は「そういった利己的な考え方で経済は回っていく」と言います。しかし、私は違うと思います。利己主義と同時に、他者の利益を考えることが人間にはできます。人間の能力を見損なってはいけないと思いますし、たまたまそういったことを表明する機会がないだけなのです。ソーシャル・ビジネスはそのような利他の表現をするビジネスですし、その中で人を幸せにすることで私たちも幸せになれます。それは経済学者が今まで私たちに知らせてくれなかったものです。

 今、世界ではテクノロジーが日々進歩しています。しかし、このテクノロジーを実際にレールに乗せるのはどこでしょうか。それはビジネス業界です。テクノロジーをクリエイティブに活用することで、社会から問題はなくなっていきます。

 昔だと、コンピュータは大きな部屋にあり、管理するための専門家がいたものですが、次第にデスクトップからラップトップになり、そしてモバイルになるといった変化が生まれており、そうしたテクノロジーがさまざまな世界をあっという間に変えていきました。テクノロジーは変化します。20年前、未来はどうなるだろうと考えていたことが、当たり前の現実となっています。

 みなさんに宿題を出したいと思います。20年後、日本はどうなっているでしょうか。それこそサイエンスフィクションを書かなければいけなくなるでしょう。それくらい、テクノロジーは進行するわけです。もう不可能という言葉はありません。可能と不可能の間の距離はどんどん狭くなっていますし、いつかは融合するでしょう。

 20年後の世界を設計してください。そしてその自分の作りたい世界では、もう誰も貧しいという表現があてはまらなくなるということを考えてください。誰も失業などしていない世界を実現することを考えてください。また、誰も生活保護を受けない社会についても考えてみてください。それは想像力さえあれば可能になります。

先進国にどんな示唆が与えられるか

 講演でソーシャル・ビジネスとの関わりについて解説したユヌス氏。続編では、ユヌス氏の行ってきたソーシャル・ビジネスは先進国にどのような示唆が与えられるかということについての会場とのやり取りの様子をお伝えする。

 →人間はロボットではないんだ――ムハマド・ユヌス氏が考える資本主義の次の世界

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