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コラム

オリンピックの制服デザイナーが語る、ハンカチへの想い窪田順生の時事日想(3/3 ページ)

ロンドンオリンピックの開会式では日本選手団が堂々と行進していたが、気になることがあった。それは彼らが着用していた制服。この制服は一体誰がデザインしたのだろうか。名前が明らかにされない背景には、“オトナの事情”があったのだ。

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ハンカチを振っている選手はいなかった

 実は石澤氏がこのデザインで最も力を入れたのは「ハンカチ」だった。2角に富士山が描かれ、波打ったような書体で中央に「日の丸」と「N1PPON」という言葉がおどる。これをポケットチーフとして折り畳むと、ちょうど富士山が胸から出ているようなデザインになるのだという。

 「これは波紋をイメージしました。あと、日の丸をよく見て欲しいんですが、なかに東北6県のシルエットが入っています。“日本一”の選手たちが東北のために世界にいい意味で、波紋を起こすような活躍をする。その姿を見て、東北の方たちに元気になって欲しい。そんな願いをこめました」

 原発事故の問題も長引き、今も苦労をしている東北のために――。そんな素晴らしいコンセプトが公式制服に採用された理由だというのは想像に難くない。にもかかわらず、このようなコンセプトはまったく発表されていない。やはり、社内デザイナーじゃないからだろうか……。

 「本当はこういうコンセプトを伝えて、代表選手のみなさんにハンカチを振ってもらいたかった。東北の人たちへメッセージを送ってもらいたかったですね。そうすることで、世界の人にも東北のことをあらためて知ってもらえる」

 残念ながら、開会式ではハンカチを振っている代表選手はいなかった。

 もし、読者のなかで代表選手や関係者に近い人がいたら、彼らに伝えてもらえないだろうか。みなさんの着ている制服には、本当はこんな願いがこめられているんですよ、と。そして、もしその願いに共感をしたら、ぜひ閉会式ではハンカチを回して欲しい。

 東北のために。

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