有料サービスは死亡した会員をどうやって知り、どう処理する?:古田雄介の死とインターネット(3/3 ページ)
無料で使えるネットサービスでは、会員が亡くなってもそのままになることが多い。しかし、定額制の有料サービスは放置というわけにはいかない。では実際、どう対応しているのか?
「通信の秘密」「一身専属性」の原則が対応の分かれ道か
一方で、遺族であっても契約の承継や譲渡を認めないサービスも多い。BIGLOBEを提供するNECビッグローブは「会員が受けていたサービスの権利を第三者が譲渡等受け取ることは現状はできません」と明言する。そのうえで、「電子メールなどのISPサービスは『通信の秘密』の原則のもと提供されており、ご家族であっても開示が難しいことをご理解いただき、周りの方に残したいものは共有可能な場所に保管されると良いと思います」と生前準備のアドバイスを送る。
@niftyを運営するニフティも「ご遺族からIDの継続利用希望をいただくケースがありますが、当社の会員規約としてIDの名義変更はできません」と、利用者からの要望を認めつつ、「@niftyサービスの提供を受ける権利は、一身専属性のものとします」(@nifty会員規約 第12条)というスタンスを貫く。
左はBIGLOBEのサービス会員規約。「第8条(権利の譲渡等)」で、第三者に権利を譲渡したり名義変更したりする行為を禁じている。右は@niftyの会員規約。「第9条(譲渡禁止等)」と「第12条(会員からの解約)」で、会員死亡時のスタンスを明記している。会員死亡時にサービスを解除できるという規約はBIGLOBEと同じ
そのほか、サービス事業者が所有している故人のコンテンツの引き渡しについても、スタンスが分かれる。例えば、レンタルサーバーの中でも、さくらインターネットは遺族による継続利用は可能ながら、データの受け渡しに対応していないため、必要な場合は契約を承継した上で遺族が自分でデータをバックアップすることになる。ロリポップ!の場合は「ご相続人であることが分かる公的証明書及び会員の方の死亡証明書をご提出をいただき、弊社で書類を確認後、データをお渡しするという流れになります」という。
死後の権利の進路やコンテンツの引き継ぎ方に見られるサービスごとの違いは、ユーザーの死後の対応について業界全体が過渡期にあることを示しているのかもしれない。
次回は、ネットバンクやオンライン通貨サービス……ユーザーのお金が仮置きされるインターネットのスポットにおける「会員の死」を追ってみたい。
協力していただいたサービス/企業(順不同)
DTI(接続サービス)、ServersMan@VPS/ドリーム・トレイン・インター
ネット、さくらのレンタルサーバ/さくらインターネット、ハンゲーム/NHN Japan、DMM.com/DMM.comラボ、So-net/ソネットエンタテインメント、OCN、Bizホスティング メール&ウェブ/NTTコミュニケーションズ、BIGLOBE/NECビッグローブ、@nifty/ニフティ、ロリポップ!/paperboy&co.
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