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コラム

機能や効率だけがビジネスじゃない、“手間をかけたい欲求”に応えよう(1/2 ページ)

11月以降、ビートルズを始めとした往年のロックバンドの名盤がLPレコードとして再発売される予定で、反応も上々のようです。LPレコードが再び人気を集めている背景には、あえて手間をかけたい欲求があるのではないでしょうか?

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著者プロフィール:松尾順(まつお・じゅん)

早稲田大学商学部卒業、旅行会社の営業(添乗員兼)に始まり、リサーチ会社、シンクタンク、広告会社、ネットベンチャー、システム開発会社などを経験。2001年、(有)シャープマインド設立。現在、「マインドリーディング」というコンセプトの元、マーケティングと心理学の融合に取り組んでいる。また、熊本大学大学院(修士課程)にて、「インストラクショナルデザイン」を研究中。


 日経産業新聞(2012年10月12日)の記事によると、ビートルズの全アルバム12作品と関連作品3作品が全世界でレコードとして再発売される予定だという。高音質なリマスター音源を用い、アナログならではの特性を引き出すため、細部までこだわった「音作り」が売りのようです。

 また、12月にはザ・ローリングストーンズ、ザ・フー、レインボー、エイジアなど1970〜1980年代のロック名盤を中心とするLPレコードも発売されるとのこと。こうした往年のロックバンドをリアルタイムで楽しんでいた年代(私もそうです)にとっては、思わずワクワクしてしまうのではないでしょうか。

 日本レコード協会によると、アナログレコードの国内生産額は2010年に底を打ち、2011年には前年比2倍の3億3600万円、生産枚数も21万枚と倍増しています。DJにとってレコードは、「スクラッチ音」を出すための必需品ですが、DJの市場は限定的ですね。

 むしろ、ゲームやアニメファン向けの「コレクターアイテム」として発売されているレコードが若者の心をとらえているようです。LPレコードの大判ジャケットは、「芸術作品」として手に取って楽しめますが、ジャケットレスの音楽配信に慣れた若者にとって新鮮に映るのでしょう。

 また、これは若者に限りませんが、自宅でゆったりと好きな音楽を楽しみたい時、ジャケットからレコードを取り出して、ターンテーブルに乗せるという「手間」がワクワク感を高めてくれる「価値ある行為」になっているのではないかと思います。

 「人の欲求(ニーズ)」の分類にはさまざまなものがありますが、次の2種類に分ける考え方があります。

  • 機能ニーズ
  • 快楽ニーズ

 「機能ニーズ」というのは、端的には生活上の不便・不満・不平を解消してほしいという欲求です。ひと言で言えば「問題解決」であり、製品・サービスに求めるのは主に機能性と効率性です。要するに、あまり手間をかけずにすばやく問題を解決してくれる製品やサービスを歓迎します。

 一方、「快楽ニーズ」は、快楽や楽しさ、達成感を得たいという欲求です。エンタテインメント商品、すなわち「映画」「演劇」「小説」「スポーツ」や、達成感や成長が実感できる「学び」が快楽欲求を充たしてくれる商品です。

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