コラム
機能や効率だけがビジネスじゃない、“手間をかけたい欲求”に応えよう(2/2 ページ)
11月以降、ビートルズを始めとした往年のロックバンドの名盤がLPレコードとして再発売される予定で、反応も上々のようです。LPレコードが再び人気を集めている背景には、あえて手間をかけたい欲求があるのではないでしょうか?
「わざわざ時間をかけること」が大事
さて、このニーズの2分類の枠組みで考えると、ネットでの音楽配信や携帯音楽プレイヤーは、すばやく手軽に音楽を聴きたいという「機能ニーズ」に対応するものだと言えますね。
そして「快楽ニーズ」に対応するのが、LPレコードでしょう。聴くまでのひと手間がかかり、手入れも必要だからこそ、楽しみの時間が長くなる。
そうなんです。快楽ニーズでは、できるだけ楽しみの時間を引き延ばしたいのです! とても面白い小説を読んでいる時、いつまでも終わってほしくないという気持ちが湧き起こるのは快楽を引き伸ばしたいから。つまり、快楽ニーズでは「手間をかけること」、言い換えると「わざわざ時間をかけること」が大事だということです。
山崎正和氏は、『柔らかい個人主義の誕生−消費社会の美学』において次のように述べています。
「人間の消費行動はおよそ効率主義の対極にある行動であり、目的の実現よりは実現の過程に関心を持つ行動」
「いわば、消費とはものの消耗と再生をその仮りの目的としながら、じつは、充実した時間の消耗こそを真の目的とする行動だ」
実際には、手間をかけたくない、つまり効率性を追求するニーズも存在しているわけですが、手間や無駄をあえて追求するニーズも並行して存在していることを私たちマーケターは忘れてはいけません。(松尾順)
※上記内容は『柔らかい個人主義の誕生−消費社会の美学』 (山崎正和著、中央公論社)を参考にしました。
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