ルネサス国有化に見る、“敗者”を救うと誰にツケがまわるのか?:窪田順生の時事日想(2/3 ページ)
経営再建中の半導体大手ルネサス エレクトロニクスの「国有化」が決まった。これで再出発となるわけだが、手放しに喜んでいいのだろうか。もし死に銭になると、この皺寄せは誰に……。
「選択と集中」ができない
インフィニオンテクノロジーズというドイツの半導体メーカーがある。シーメンスというドイツを代表する製造メーカーの子会社として誕生し、その後に独立。そういう意味では、日立、三菱、NECが設立したルネサスとよく似ている。
リーマンショック直後の2009年、世界の半導体メーカーは苦境にたたされた。ご多分にもれず、インフィニオンもそうだったが、ある決断によってこの危機を脱している。
競争が激化してきて、今以上に成長がみこめない「通信」にさっさと見切りをつけてインテルに売却。「自動車」「省エネ」「セキュリティ」の3分野に力を注ぐようにしたのである。いわゆる「選択と集中」というやつだ。
日本の経営者もこの言葉は大好きで、お題目のように唱えているが、終身雇用やらの“しがらみ”があってほとんどできたためしがない。しかし、彼らはドイツ企業なのでスパッと決めた。市場も「これは見込みがあるじゃないか」と評価された。ドイツ政府やシーメンスが救済しようなんて話はこれっぽちも出ることなく、公募増資で危機を乗り切ったのだ。
インフィニオンテクノロジーズの話は企業再生の好例だが、ではルネサスにこういう芸当ができるのか、というと「それは期待しないほうがいい」とかつて半導体メーカーにいた知人は言う。
「日本の大手半導体メーカーというのは厳密には会社じゃない。電機メーカーの一事業部。だから経営にも“しがらみ”がすごくある。今回、ルネサスに融資をしたのは産業革新機構以外では日立、三菱、NECという元々の親会社だけではなく、トヨタや日産という取引先。“しがらみ”でがんじがらめとなり、スピード感のある改革なんてできるわけがない」
船頭多くして船山に登る、ではないが、あちこちの顔色をうかがうことにヘトヘトで、とてもじゃないが「選択と集中」なんてできるわけがないというのだ。
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