ルネサス国有化に見る、“敗者”を救うと誰にツケがまわるのか?:窪田順生の時事日想(3/3 ページ)
経営再建中の半導体大手ルネサス エレクトロニクスの「国有化」が決まった。これで再出発となるわけだが、手放しに喜んでいいのだろうか。もし死に銭になると、この皺寄せは誰に……。
皺寄せは誰にくるのか
どう考えても、死に銭になる算段が高いわけだが、じゃあこの皺寄せは誰にくるのかというと、「弱者」だ。
例えば、菅直人元首相や福島瑞穂党首が理想とする「弱者に優しい」という高福祉国家を運営するためには、消費税を25%にするだけでは到底足りない。だから、スウェーデンなんかは「敗者」をザックリと切り捨てる。
リーマンショック後の不況で、自動車メーカーのボルボもサーブも傾いた。「2社ともスウェーデンを代表する企業だからなんとか救済しろ」とか、「技術流出したらまずいだろ」なんて日本の経団連みたいな意見も出たが、スウェーデン政府はシカトした。税金はビタ一文払いませんよ、と。
フォードの労働組合みたいに2社の労働者たちもワアワア騒いだが、大臣は「自動車はもうあきらめて、さっさとほかの仕事についてください」なんて調子でとりあわなかった。「派遣切り」で大騒ぎする福島党首なら卒倒しそうな話だが、これが彼女が愛してやまない「高福祉国家」の現実だ。
結果、ボルボは中国企業に買われた。一方のサーブはオランダのスポーツメーカーの手にわたったが、それでもうまくいかず倒産した。
弱者に優しくするためには、沈んでいく「敗者」は見殺しにする冷徹さが必要という原理を、この「社会科学の実験国家」は世界に示して、高く評価された。
しかし、日本政府は助かる見込みのない「敗者」を、同じく苦境にたたされている企業まで巻き込んで、引っ張り挙げようとしている。ミイラ取りがミイラになるパターンだ。
そんな経営再建話が盛り上がっていたころ、国会では生活保護予算670億円がザックリ削られた。「敗者」に優しくするためには、「弱者」を見殺しにしなくてはいけない。確かにつじつまは合う。
こちらもそこそこの“実験結果”かもしれないが、評価されないどころか、「まだそんなことしているの?」と呆れらている。「斜陽産業の国有化」が悲惨な結果しか招かないことは、英国が40年前にすでに証明している。国際競争力と労働意欲の低下を招いた「英国病」なんて言葉もあるぐらいだ。
ルネサスを国有化したので、お次はシャープも……なんて声も聞こえるが、これ以上の恥の上塗りはやめて欲しい。
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