日本人でも間違える敬語表現って?:日本人が気づいていないヘンな日本語(1/2 ページ)
日本では、たとえ相手が目下の人であっても常に感謝の気持ちを表して敬語を使うのが礼儀だ。その一方で「日本人でも完璧な敬語を使いこなしている人はめったにお目にかかれない」と、日本語教師の長尾氏は言う。第7回は、正しい敬語の使い方について勉強していこう。
日本人が気づいていないヘンな日本語:
この連載は書籍『日本人が気づいていないちょっとヘンな日本語』(アスコム)から抜粋、再編集したものです。
日常会話でよく使う日本語なのに、実は日本人自身もよく分かっていない。よく使うけど、考えてみたらちょっと不思議な日本語……。そんなこと、ありませんか?
「ピンからキリまで」の「ピン」って何のこと? とか、「全然OK」は間違った使い方と言われるけど、実は間違いではないって知っていましたか?
私たち日本人が「当たり前」と思っていることも、外国の人たちから見ると「ヘンだよ、おかしいよ」ということがたくさんあります。間違った日本語ということではなく、外国人の目から見て奇妙に見えるということです。
この本では、英語教師デイビッド・セイン氏が持つ日本語の疑問について、日本語教師である長尾昭子氏が答えていきます。みなさんも、質問に登場する「日本語」の中に「日本語のおもしろさ」を再発見できるはずです。「ヘンだけどおもしろい日本語」の世界を、一緒に探検してみませんか。
著者プロフィール:
デイビッド・セイン
アメリカ出身。英会話学校経営、翻訳、英語書籍・教材製作などを行うクリエイター集団「エートゥーゼット」の代表。これまで累計350万部の著作を刊行してきた英語本のベストセラー著者。日本で30年以上の豊富な英語教授経験を持ち、これまで教えてきた日本人生徒数は数万人に及ぶ。
長尾昭子(ながお・あきこ)
公益社団法人国際日本語普及協会(AJALT:文化庁所管の外国人への日本語普及・教育機関)講師。慶応大学卒。欧米人のビジネスパーソンや外交官の間で大人気の教師で、教科書作成や日本語教師向けの雑誌への連載執筆の実績多数あり。
部下に敬語を使うのはヘン?
セイン:友人の会社社長にお芝居のチケットをお願いしたんです。そしたら、チケットをぼくに渡しながら「秘書が予約してくれたんだ」と言いました。
秘書は社長から見たら目下ですから、この場合は「予約してくれた」のような敬語表現ではなく、単に「秘書が取った」でいいと思います。私の感じ方は違いますか?
長尾:確かに敬語は原則として目上に対して使うものですが、日本語ではたとえそれが仕事上当然のことや義務として当たり前のことであっても、相手の行為には常に感謝の気持ちを表すのが礼儀になっています。
だからタクシーの運転手に対して「次の角を曲がって下さい」と言い、レンタカーの事務所で「クルマを貸していただけますか」と言うわけです。
それができずに部下に乱暴な口を利いたり、下請けの会社に無理難題を押しつけたりするような人は「パワハラ」かもしれません。
セイン:日本語を勉強している外国人にとって「敬語」は最難関かもしれません。日本語のキャリア30年のぼくでも、敬語はまだまだ不充分です。
長尾:いえいえ、セインさんはお上手ですよ。
でも、日本語の敬語表現がむずかしいというのは、同感です。なにしろ日本人でも、完璧な敬語を使いこなしている人は、めったにお目にかかれませんから。
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