運行本数は増えるのか? 改良後の銀座線渋谷駅に注目:杉山淳一の時事日想(4/4 ページ)
鉄道路線の終端駅では交差支障が発生し、それが列車の増発を制限する。東急東横線は地下鉄乗り入れで交差支障を解消した。一方、東京メトロ銀座線渋谷駅の改良案は交差支障を新たに発生させるようだ。この考え方の違いはなぜだろうか。
新型電車は新渋谷駅の準備のひとつだった?
交差支障によって運行間隔が広がる可能性も残る。でも「それでいい」という考え方もある。東横線渋谷駅の地下化の影響で、銀座線渋谷駅の乗り換え客が減ったからだ。東横線と銀座線を乗り換える場合、地上まで大移動するより、渋谷駅の地下で半蔵門に乗り換えれば、表参道駅で半蔵門と同一ホームの銀座線に乗り継げる。また、東横線から銀座線に乗り換える客のうち、乗り入れ先の副都心線経由に切り替えた人々もあっただろう。銀座線渋谷駅の利用客が減るなら、運行間隔は3分以上でも大丈夫かもしれない。
銀座線渋谷駅の改良は、列車の動線より乗客の動線を優先した形と言える。東京メトロとしては「東横線の乗り換え客が減るぶん、山手線から乗り換えやすくしよう」という目論見もあるかもしれない。そうなると銀座線の2分間隔は維持したいところだ。銀座線の本数を減らすと、表参道駅で半蔵門からの乗り換え客を受け止められないかもしれない。
運行間隔が変わらないと思われる理由は、車両の加速性能の向上によって、交差支障の影響が抑えられるからだ。銀座線には昨年春からレトロモダンデザインの新型車両「1000系」を導入している。この車両は外観や室内が変わっただけではなく、現行型よりも加速性能が高い。東京メトロは2016年度までにすべての車両を新型に置き換える予定だ。つまり、渋谷駅改良までに銀座線はすべて新型車になる。
東京の鉄道路線としては列車の長さが短いことも交差支障を小さくできる理由だ。例えば同じ渋谷駅の京王井の頭線は折り返し式だが、ラッシュ時間帯に2分間隔で発車させている。列車の長さも短く、渡り線を通過する時間も短い。井の頭線は長さ20メートルの車両が5両編成で約100メートル、銀座線は長さ16メートルの車両が6両編成で約96メートルとなっている。車両の性能が上がれば、井の頭線にできることは銀座線にもできそうである。
さて、渋谷駅改良後の銀座線の運行間隔はどうなるか。興味深いところだ。
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