ネットを使ってテレビを見るのは、そんなにダメなの?:田原総一朗VS. 水道橋博士のテレビと著作権(前編)(2/6 ページ)
動画サイトにアップロードされているテレビ番組は、かなりの数にのぼる。しかしそれらの番組のほとんどは、テレビ局によって消されてしまう。ネット上でテレビ番組を見ることができるようになると、どのようなメリットがあるのか。田原総一朗氏と水道橋博士が語り合った。
水道橋:代表的なのはYouTubeですよね。ニコニコ動画とかにもありますが。海外のサイトもあるし、やり方もいろいろあるみたいですね。これには著作権的な問題があるんですけど、この状況をテレビに出ている側の人間として、田原さんはどう思ってます?
田原:いいんじゃないですか? 第一、日本のテレビ局はネットに上がっているテレビ番組をもう全然削除していないじゃない。著作権のことなんかもうあきらめているんじゃないの?
水道橋:いや、あきらめてもいないんですけどね。違法にアップロードされた動画を見つけたら削除要求を出して、二度と上がらないようにする。そういう努力をテレビ局はものすごくやっているんです。でも僕はそれに対して「僕が出た番組に関してはその努力をしないでください」と要請してるんです、テレビ局側に。
田原:それには全く賛成だね。
水道橋:もともと視聴するのにお金がかからないものを、リアルタイムの視聴者でない人たちが本来の放映時間とは違うタイミングで、無料で見ている。このこと自体には出演者としては何の抵抗もないんですよ。「インターネット配信だから別途課金してくれ。その分お金をよこしてくれ」という気持ちもありません。確かに全く問題がないわけではないと思うし、著作権は大事にすべきものだと思うけど、それ以上に自分が表現していることや発言していることをより多くの人に見てもらうというほうが意義が大きいと思うんです。
田原:自分のやったことがより多くの人に見られたほうがいいわけだよね。
水道橋:例えば大阪で放送されているやしきたかじんさんの番組は、東京では放映されていないけどネットでは全部見られるようになっているわけです。テレビ局が黙認しているんですよね。そうなると「大阪でしか見られない番組だけど、ネットで見ておこう」となる。その結果「たかじんの番組は治外法権だ」と評判を高めているんです。
田原:テレビ局の戦略なわけだ。
水道橋:「こういう番組をやっているんですよ」と知らしめると考えたほうが考え方として正しいし。確かに一時的にはテレビで見る視聴者は減りますよ。YouTubeで見ればいいと思う人が多ければ。でもネットを使ってタダで見せたほうが知名度が上がるし、最終的には視聴者が増えるかもしれない。終わったものはゼロ円なんです。ゼロ円で見てもらって「この番組は面白いね」と思ってもらって次の価値を生んでいくほうが正しいと思うんですよ。その概念が分からない人が多いんだよな……。
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