コラム
泥臭くたっていいじゃないか! 漫画『重版出来』にみる出版界の今:相場英雄の時事日想(4/4 ページ)
「また老舗雑誌が休刊」――。出版界を取り巻くニュースに触れる際、このような“枕詞”が必ずつくが、実際のところはどうなのか。出版界の問題点などを鋭く突いている、漫画『重版出来』を紹介しよう。
電子書籍にすれば、そんな泥臭いことしなくてもいいじゃないか。そんな声も聞こえてきそうだ。しかし、あくまでも私見だが、現状、日本では各種の規格が乱立気味で、米国のように一気に電子書籍が普及するとは考えていない(実際問題として、電書の印税では現状、とても食っていけない)。漫画でも小説にしても、作家のほかに多くの人が携わってヒット作を生み出しているのは明白な事実なのだ。
「仕掛け」のエピソードは、疲弊する出版界がもがく姿であり、かなり泥臭い部分だ。だが、誤解を恐れずに言えば、「泥臭くていいじゃないか」というのが私の意見。と同時に、本書の一番の魅力なのだ。
ちなみに、担当編集者である山内菜緒子氏によれば、同作は無事に「重版出来」となった。もっとたくさんの読者に読まれてもいい作品であることは間違いない。
関連記事
- “カワイイ”が自然を殺す、北海道で見た人間の残酷さ
「キタキツネ」といえば、北海道の野生動物のひとつとして有名だ。野生動物なので、本来、人間とはあまり遭遇しないものだが、筆者の相場氏はクルマを運転中に出会った。しかもその姿を見て、違和感を覚えたという。その理由は……。 - 「ピンクスライム」は問題にならないのか 食品業界の裏側に迫る
米国のファストフード業界が揺れている。低価格を支えるある加工商品がやり玉に上がっているが、米当局や専門家は安全性に問題はないとしている。それにしてもこの問題、日本に“飛び火”するかもしれない。 - “やらせライター”に困っている……とあるラーメン店の話
とあるラーメン店の店主がこう言った。「本業以外の雑務が増えてやりにくい。昔はこんな気を遣う必要なかったのに」と。本業とは、もちろん丹誠込めて作る自信作のラーメンのこと。では本業以外とは、一体どんなことなのだろうか。 - 桜宮高校バスケ部キャプテンの自殺の原因は「体罰」ではない
大阪市立桜宮高校で、バスケ部の顧問の教師に暴力を受けていた男子生徒が自殺した。この問題を受け、マスコミは連日のように「体罰」として取り上げているが、どうもしっくりこない。この教師がやったことは「体罰」ではないからだ。 - NHKが、火災ホテルを「ラブホテル」と報じない理由
言葉を生業にしているマスコミだが、会社によってビミョーに違いがあることをご存じだろうか。その「裏」には、「華道」や「茶道」と同じく「報道」ならではの作法があるという。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.