“プロ”はなにをしていたのか? 猪瀬都知事、失言の背景:相場英雄の時事日想(3/4 ページ)
猪瀬直都知事の“失言”が、世界的な話題を集めた。五輪招致のライバル都市を暗に批判したと受け止められる発言を行い、これが海外紙に載ったことが発端だ。知事の失言の背後には、広報活動を引き受けている“プロ”のずさんさが潜んでいたのではないか。
基本、オフレコなし
私は元通信社記者だ。改めてインタビュー取材の段取りについて、簡単に触れてみる。まずは取材対象者にアポを取り、会いに行く。その際、相手がなにも条件を付けなければ、インタビュー中で出た言葉は全て“オン・ザ・レコード”、すなわちオンレコ扱いとなる。ニューヨーク・タイムズ紙についても、おそらくオンレコだったはず。
では、なぜ事前にプロの黒子であるシャンドウィック社が、猪瀬知事に対して事前レクで注意点を授けなかったのだろうか。
知事の訪米は、五輪招致に向けたアピールが主眼。これに対し、取材する側は虎視眈々と揚げ足取りを狙っていたのは明白なのだ。五輪招致をアピールする知事にそのままインタビューしても、東京の広報紙になってしまう。換言すれば、提灯記事を書くことは避けたいと思うのが記者の基本的な心理だろう。本筋の話が終わったあとで、ダメもとで意地悪な質問をしたのではないか、と元記者として想像した次第なのだ。
実際、私にも経験がある。大手銀行や大企業トップと個別に会った際、本筋とは別にあえてライバル企業や他社製品のネタを振り、「おいしい見出し」が取れるような言葉を引き出すのだ。
たいていは、陪席した広報マンが話を遮り、失言は引き出せない。あるいは、トップ自身が「他社の事柄にコメントはできない」でおしまいとなる。だが、10回に1回程度の割合で、記者側が望む言葉が引き出せるときがある。
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