「オフィスグリコ」と「ぐりこ・や」に学ぶ縮小市場での生き残り方:それゆけ! カナモリさん(1/3 ページ)
2002年の東京進出以来、多くの企業でお馴染みの「オフィスグリコ」。サービスエリア、ターミナル駅を中心に人気となっている土産店「ぐりこ・や」。一見別々の展開に見える両者は、あるプロジェクトが結実したものだという。
それゆけ! カナモリさんとは?
グロービスで受講生に愛のムチをふるうマーケティング講師、金森努氏が森羅万象を切るコラム。街歩きや膨大な数の雑誌、書籍などから発掘したニュースを、経営理論と豊富な引き出しでひも解き、人情と感性で味付けする。そんな“金森ワールド”をご堪能下さい。
※本記事は、GLOBIS.JPにおいて、2013年4月23日に掲載されたものです。金森氏の最新の記事はGLOBIS.JPで読むことができます。
皆さんは、「オフィスグリコ」をご存じだろうか。B5サイズ、3段重ねのボックス。中には10種類程度、全24個の菓子が詰められ、上部にはかぱっと口を開いたカエルと、「100円入れてね!」の表示。菓子以外にアイスクリームや飲料の入るタイプもある。
東京、大阪、名古屋など大都市圏の事業所約8万社12万カ所に細かく展開し、年間43億円を稼ぐ。とは言え、単体でも1470億円を売り上げる江崎グリコ全体からみれば、その額面は小さくも思える。1個100円の商品の売上を、12万カ所も巡って回収、賞味期限を守りながら商品補充する手間や管理を考えれば、利益貢献率が高いとも考えにくい。
そして「ぐりこ・や」。ターミナル駅や空港、高速サービスエリアなど15カ所に出店するこの直売店には、同社の人気商品「アーモンドチョコレート」などの製造工程を見せ、出来たてを提供できるキッチン機能を併設(一部店舗)。その他、限定商品の展開などにより耳目を引き、幅広い年齢層を広い商圏から集客している。
とは言え、こちらも運営や商品開発の手間など考えると、さほどの利益を生み出すとは思えない。かと言って規模化すれば希少性を失う。実際、江崎勝久社長もMSN産経ニュースの取材に応え、「単に拡大すればいいというものではない」とコメントしている。
ではなぜ彼らは、これらビジネスを推進しているのか。オフィスグリコに至っては1996年の構想開始以来、すでに15年超が経過している。
関連記事
- ヒット商品の方針転換は成功するか? グリコ乳業「ドロリッチ」の挑戦
ヒット商品を作るには。そして、ヒット商品をロングセラー化するには。グリコ乳業は“デザート飲料”というカテゴリを創出したヒット商品「ドロリッチ」で、商品開発の一大テーマであるその解を「環境変化への対応」と導き出した。 - 累計販売数10億本、森永乳業の高級アイス「パルム」のヒミツ
累計販売数10億本というアイスクリーム「PARM(パルム)」シリーズ。新商品「PARM ピュレコーティング オレンジ&バニラ」も1カ月で年間目標の半数である710万本を売る破竹の勢いを見せている。パルムの「売れ続けるヒミツ」を森永乳業のブランド担当者に聞いた。 - 成功体験を壊す勇気、ザ・プレミアム・モルツ好調のヒミツを探る
不振のビール市場で気を吐き続けるサントリーの「ザ・プレミアム・モルツ」。市場が前年割れをみせる中、110%の2けた成長を続けるワケをサントリーに聞いた。 - ユニクロとは違う!? ターゲットを絞らないダウンウエアの戦略
圧倒的な価格力と品質を誇るユニクロと、一部プレミアブランドのみで席巻されたかに見えるダウンウェアの市場で小さくも確かに息づきはじめたブランドがある。あえてターゲットを絞らず、ありそうでなかった製品でファンをつかんだ「YOSOOU(粧う)」の戦略をパブリックスペースの永嶌社長に聞いた。 - 発売10週間で5000万本突破――アクエリアス ゼロの開発戦略
5月7日の発売以来、わずか10週間で累計5000万本を突破したアクエリアス ゼロ。8月に入ってさらにスピードは加速し、1億本の大台も視野に入っているという。ヒット商品が小粒化する中、際立った成功を見せた同製品のマーケティング戦略について担当マネージャーに聞いた。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.