「オフィスグリコ」と「ぐりこ・や」に学ぶ縮小市場での生き残り方:それゆけ! カナモリさん(2/3 ページ)
2002年の東京進出以来、多くの企業でお馴染みの「オフィスグリコ」。サービスエリア、ターミナル駅を中心に人気となっている土産店「ぐりこ・や」。一見別々の展開に見える両者は、あるプロジェクトが結実したものだという。
「モノ」ではなく「コト」を売る
「既存の売り方では限界が来るという、明確な危機感がありました」と、広報担当者は当時を述懐する。
1990年代、日本の人口動態は急速な少子化進行を示していた。大手菓子メーカーとしては主たる消費者である子どもの数が減少することは、ビジネスの縮小と直結する。
そこで、「今までのない顧客像」や「今までにない売り方」がさまざま検討された。当時はまだ菓子が多く扱われていなかったホームセンターやドラッグストアなど、「今までにない売り場」をおさえる新チャネル開発や、もっと賞味期限の短い商品を流通させるなど「今までにない販売の仕組み」を展開する物流改革などである。それらのアイディアをさらにブラッシュアップし、商品をどう売るかという「モノ売りの発想」を越え、顧客の視点から菓子に触れる新しいタイミングやシーンを考えていこうという新しい取り組みが始まったのである。
最初に行ったのは「生活者の1日」を観察することだったという。小学生から60歳代までの数百名を対象に調査をした結果、「菓子を食べるシーン」として、約7割が「家庭」、約2割が「オフィス」という数字が浮かび上がってきた。
今では当たり前となった「オフィスで菓子を食べる」という光景だが、当時の担当者にとって大きな驚きだったという。そこで、「働くこと」と「菓子を食べること」という2つのシーンをつなぐ、新市場創造の可能性が見出された。「オフィスグリコ」のアイデアの原型が誕生した瞬間である。
担当者が注目したのは、社会人がオフィスで菓子を食べ出すに至った背景だった。当時は1991年のバブル崩壊からの長引く不況の中、業績回復を目指し多くの企業が成果主義を導入。オフィスで働く人々にとっては労働の効率化や時間管理など、ストレスが増大し始めている時期だった。
「人間は一日中、集中できる訳はない。『ちょっとお腹がすいた』とき、『あともうひとがんばり』というとき、次の仕事に元気に向かうツールとしてお菓子は役に立つ」。そうした考えから、お菓子にオフィスでの「リフレッシュメント」という新しいコンセプトを創造したという。つまり、「モノとしての菓子」を売るのではなく、「ソリューション=コトとしての菓子」を売るという発想である。
一方の「ぐりこ・や」はどうだろう。「顧客に対してワクワク感を提供することに一貫して注力している」と、同企画部門のマネージャーは言う。「オフィスグリコ」は働く場という、ハレとケでいえばケの場で用いられるのに対し、「ぐりこ・や」はギフトやパーティの場での消費というハレの日需要を切り拓いた展開である。
そのルーツを辿れば、古く1989年の「ジャイアントポッキー」に行き着く。その後、1994年の大手菓子メーカー初の地域限定お土産菓子「ジャイアントポッキー<夕張メロン>」へと続き、それ以降も顧客に「ワクワク感」を届ける商品を開発し続けた。「モノではなく、ワクワク感を売る」という発想である。
「ぐりこ・や」は、2001年に談合坂サービスエリアにオープンした。ジャイアント菓子や地域限定品だけでなく、一般の店舗では購入できない半生タイプの「ポッキーケーキ」「ビスコのカステラ」なども扱って人気を博し、順調に店舗拡大するに至った。
ただ、競合の相次ぐジャンボ菓子への参入や、コンビニスイーツの進化による半生菓子の魅力の低下などで、顧客の「ワクワク感」は次第に薄れていった。そこで導入したのが2012年、「ぐりこ・や」の要素に作りたて菓子を提供するキッチン機能を併設した「ぐりこ・やkitchen」(東京駅一番街)である。そこで参考にしたのは、1988年にオープン、2011年には来場者数150万人を突破した、工場と企業ミュージアムが合体した見学施設「グリコピア神戸」だった。
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