路線図が掲示されないバス停は困る……公共交通機関の情報サービスを精査せよ:杉山淳一の時事日想(1/5 ページ)
2012年10月に経営破たんした「井笠鐡道」のバス路線が、4月から中国バス100%出資の「井笠バスカンパニー」として再スタートした。Webサイトでは路線や運賃の的確な情報提供も実施。井笠鐡道が怠った部分の補完が始まっている。
杉山淳一(すぎやま・じゅんいち)
1967年東京都生まれ。信州大学経済学部卒。1989年アスキー入社、パソコン雑誌・ゲーム雑誌の広告営業を担当。1996年にフリーライターとなる。PCゲーム、PCのカタログ、フリーソフトウェア、鉄道趣味、ファストフード分野で活動中。信州大学大学院工学系研究科博士前期課程修了。2008年より工学院大学情報学部情報デザイン学科非常勤講師。著書として『知れば知るほど面白い鉄道雑学157』『A列車で行こう9 公式ガイドブック』など。公式サイト「OFFICE THREE TREES」ブログ:「すぎやまの日々」「汽車旅のしおり」、Twitterアカウント:@Skywave_JP、誠Styleで「杉山淳一の +R Style」を連載している。
私は高校時代から、地方の鉄道を訪ね、乗り継ぐという旅をしてきた。その旅のスタイルが、インターネットで大きく変わった。旅立つ前に「きちんと予定を立てられて、予算を把握できる」からだ。
インターネットが普及する前は、書店で販売されている時刻表が情報の全てだった。国鉄の幹線と地方線は全ての列車が載っている。東京や大阪の電車は省略されて、始発と終発程度だった。都会の電車は運行本数が多いから困らない。しかし、国鉄以外の地方の路線は情報が極端に少なかった。最大の情報量を持つ大判の時刻表でも、地方の鉄道やバス路線は巻末に寄せられ、時刻も駅も省略されていた。バスについては掲載すらされない路線や会社もあった。
私の目的地であり経由地は、そうした地方交通機関である。時刻表で省略された地域を旅する場合、正確な旅程は作れない。何時間単位で余裕を持って旅程を組み立てる。多めにおこづかいを持って行き、常に節約の旅となった。電話で問い合わせればいいけれど、なんとなく煩わしい。もっとも、そういう不明確な部分を楽しむ気持ちもあった。
書店販売の時刻表の情報量については、当時も今もあまり変わらない。しかし、いまやインターネット時代である。時刻表の巻頭地図や巻末の記事で、バス路線がありそうだと分かったら、運行会社のWebサイトを表示する。そこには全ての停留所を示す路線図があり、全ての便を掲載する時刻表があり、運賃表もある。
地方交通機関のWebサイトのおかげで、今では旅立つ前に、1分単位の旅程ができ上がり、予算も組み立てられる。乗り換え案内アプリもあるし、各社の時刻表データを集めて表示するWebサイトもある。ほんとうに便利な世の中になった。
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