中途半端なトップダウンはやめなさい(1/2 ページ)
業務改革を進める上でいくつかの欠かせない要素があります。その一つは「業務改革リーダーの存在」です。最近それに加えて感じるのはやはりトップのリーダーシップです。
著者プロフィール:野町直弘
アジルアソシエイツ社長。慶應義塾大学経済学部卒業後、大手自動車メーカーに就職。同社および外資系金融業にて調達・購買実務および、調達部門の立ち上げを経験。コンサルティング会社にて調達・購買、ロジスティック、BPR、SCMなどのプロジェクトを担当。ベンチャー系WebインテグレーターでCOOおよびB2Bチームの立ち上げを行う。その後独立しアジルアソシエイツを設立。
業務改革リーダーは「信念と情熱」を持っています。短期的な視点だけでなく中期的な視点から会社の成長や体質強化を目指す、それを実現することに信念を持っています。また、改革にかける情熱も相当なものです。企業体質の改革を順次行っていくシナリオを頭の中に描いています。
最近それに加えて感じる場面が増えているのはやはりトップのリーダーシップです。「うちはトップダウンは機能しないから」と多くの企業の方がおっしゃいます。しかし私にはそれが自分が改革できない言い訳にしているとしか思えないことも少なくありません。
特に「集中購買の推進」「開発購買の推進」は社内の多くの関連部署を巻き込み推進する必要があります。このような改革については「人員を増強し体制を整え」「プロセスを整備しルールを作り」、「それを守らせる」ことを一気呵成にトップダウンで推進することが一番の早道であるといえます。
多くの企業では「そんなことは無理」という状況でしょう。次善の策はあるかもしれません。しかし結果的に投資対効果が上がりやすいのは、このような一気呵成方式での推進であることは間違いありません。
先日ある企業で集中購買推進についての相談を受けました。その企業も事業部が強く基本分散購買であるものの、今まではできるところから集中購買を進めてきました。トップからは「集中購買をもっと進めなさい」という指示はあるものの強力なトップダウンは期待できないとのことです。一方で集中購買を進めるとどの程度のコスト削減機会が望まれるのか、ということをトップから打診されているようです。
私はこれは極めて中途半端なトップダウンだと考えます。トップは「これ位の効果が見込めるのであればこうしなさい」ではなく「これ位の効果を上げるためにはどうすればよいか、考え推進しなさい」でなければならないのです。そのために必要な施策があれば「人を増強したり」「制約を排除したり」するのが正にトップの仕事なのです。
中途半端なトップダウンは業務改革の妨げになるだけでなく現場のやる気を失わせることにもつながります。また、やる気ある業務改革リーダーを潰すことにもつながります。さまざまな弊害につながるのです。
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