中途半端なトップダウンはやめなさい(2/2 ページ)
業務改革を進める上でいくつかの欠かせない要素があります。その一つは「業務改革リーダーの存在」です。最近それに加えて感じるのはやはりトップのリーダーシップです。
一方最近それとは対照的なトップの話を改めて聞く機会もありました。一社はN自動車です。N自動車では経営危機を通じてカリスマ経営者がトップに就任しました。彼がやったことの一つが購買部門の地位向上です。カリスマ経営者は購買部門に対して3つの指示をしたと聞いています。
- 購買は社内と取引先の癒着(ゆちゃく)を失くす役割を果たすこと
- すべての取引先選定の権限は購買が持つこと
- 購買は原価低減目標を達成すること
非常にシンプルです。特に「購買は社内と取引先の癒着を失くすこと」ということは興味深いです。またそのために「何か制約があればそれを取り除くのがトップの役割」という考えを徹底しています。脱系列(実際には意思をもった系列作りですが)もその制約を取り除く一つの施策でしょう。
もう一社はある大手素材製造企業です。その企業は「集中化」「標準化」「競争化」というキーワードの元集中購買を推進しています。その企業では調達部門がトップに部門目標を示したときにトップから言われたそうです。「何故頂上を目指さないのか?」と。この企業のトップは中間指標である「集中購買率」や「競争購買率」にこだわったそうです。
最終的な目的はコスト削減ですがこのような中間指標の達成はより重要です。何故なら仕組みの定着度を測定できるからです(無論意味のない数値管理は避けるべきです)。米国でもSpend Under Management(管理できている支出)の比率が高い企業ほど調達・購買の先進企業だと言われています。
このような大所高所からモノが見えるトップは中途半端なトップダウンはしません。またそのトップに共通した要素は極めてシンプルで分かりやすい考え方や目標をもっているという点です。多くの企業が残念な「中途半端なトップダウン」から脱せることを願っています。(野町直弘)
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