もう止めないか? 実態と違う、日本独自の燃費“規格”:相場英雄の時事日想(3/3 ページ)
「1リットル=30キロメートル達成!」――こんな広告を見るたびに、不信感を覚える人も多いのでは。広告やカタログに載る燃費と、実際にユーザーが走行した際の数値に大きな隔たりがあるのに、なぜ日本は独自の燃費規格を掲載するのだろうか。
先の記事を書く際、私は多くのユーザーが弾き出した「e燃費」の数値と、米国で売られている日本製の主要エコカーの数値を比較してみた。すると、日本のJC08基準ではなく、米国基準に近い数値がe燃費のサイト上に載っていて驚いた。
「誇大広告に対する風当たりの強い米国では、JC08の数値をカタログに載せた途端、たちまち集団訴訟が起こるのは確実」(同)とみる専門家は少なくない。
実際問題として、かつては日系メーカーの“エコカー”が、実燃費が悪いとして訴訟の対象となった経緯がある。このほか、つい最近は韓国ヒュンダイの主力車が燃費性能水増しを追及され、ユーザーが多めに払った燃料代を返還する事態に追い込まれたばかり。
ここで私からの提言だ。
米国政府が採用しているクルマの燃費基準。優秀な日本の官僚、そしてメーカーならば十分に国内で適用可能なはずだ。多くのユーザーが集めたデータを反映させたe燃費と、米国基準のデータが極めて近いのは、素人目からみても、米国、日本の基準どちらがユーザーに優しいか一目瞭然だ。
ちなみに、先の自工会の冊子には「監修」として経済産業省と国土交通省自動車局が名を連ねている。
日本の消費者は米国と比べておとなしいのかもしれない。だが、e燃費のようなサイトが立ち上げられている以上、ユーザーの監視の目は厳しくなっている。
よもや、官民一体となり、クルマの販売を下支えするために、ユーザーフレンドリーでない基準を使い続け、“過剰なエコ”を演出しているのではないか。いや、冊子を作ってまで消費者をごまかそうとしている……そんなことは絶対にないと信じたい。
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