学生諸君、「キャリアデザイン」だけはやめておけ(1/2 ページ)
キャリアデザインという就職指導は、いい加減にやめないと学生が可哀想だ。日本企業においては無意味どころか、会社にとって面倒な話にしかならない。
著者プロフィール:川口雅裕(かわぐち・まさひろ)
イニシアチブ・パートナーズ代表。京都大学教育学部卒業後、1988年にリクルートコスモス(現コスモスイニシア)入社。人事部門で組織人事・制度設計・労務管理・採用・教育研修などに携わったのち、経営企画室で広報(メディア対応・IR)および経営企画を担当。2003年より株式会社マングローブ取締役・関西支社長。2010年1月にイニシアチブ・パートナーズを設立。ブログ「関西の人事コンサルタントのブログ」
「あなたが、この会社に入ったら何をしたいですか? どうなりたいですか?」と、多くの面接官が学生に質問するらしい。もし、面接官が同じ質問をされたらどう回答するのだろう。恐らく、答えに窮するはずだ。
査定のフィードバックで、「今後のキャリアについて、どう考えているの?」と上司から尋ねられたら、大抵の人はモゴモゴなってしまうか、お茶を濁すような回答しかできない。この会社で何をしたいか、どうなりたいかを明確に答えられるサラリーマンは日本の会社ではごく一部である。
そうなる理由は簡単だ。日本では、職務内容、勤務地、処遇などの労働条件を決定する権利は会社にある。従業員は異動や転勤の命令に従わねばならない、と就業規則に明記されており、このような強い会社の権限と引き換えに、解雇が原則として禁じられているのである。
クビにならない理由は、何をしたいか、どうなりたいかという意思を表明せず、自分のキャリアを会社に委ねることに合意しているからなのだ。ほとんどのサラリーマンが今後のキャリアを訊かれて答えに窮するのは、そんな日本的雇用慣行の中で過ごしてきたからである。
会社に入って仕事をするのだから、何をしたいか、どうなりたいかを明確にしておくことが大切だ、というのは一見、正しそうだ。だから、学生に対する就職指導では「キャリアデザイン」に力が注がれる。人事部も、何をしたいか、どうなりたいかを明確に語ることができる学生を意欲的だ、頑張ってくれるだろうと評価し、採用しようとする。だが、これは勘違いである。
確かに、労働条件をすり合わせて契約するような米国型の雇用慣行であれば、何をしたいか、どうなりたいかといったキャリアの表明は非常に重要で、それが曖昧であれば就職という契約を得ることは難しいだろう。
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