年金を担保にした「偽装質屋」――被害を拡大させたのは誰だ?:窪田順生の時事日想(2/3 ページ)
年金を担保にした「偽装質屋」が増えている。この手口は使い古されたものだが、なぜ急に増えているのか。その背景には、2006年に施行された法改正があった。
使い古された手口がブレイクをした理由
2010年ごろ、「消えた老人」などといって、全国で100歳以上で所在不明の老人が23万人いることが分かったと大騒ぎになったが、その裏にはこういう年金担保を使ったアングラビジネスがあった。事実、山口組系暴力団幹部(36)が、すでに死亡している他の幹部の父親の年金600万円を不正受給し、組の運営費に充てていたとして警視庁に逮捕されたこともあった。先ほどふれた福岡の「偽装質屋」も1988年ごろから高齢者を相手にして、年金を担保にしてカネを貸し付けていたという。
そんな使い古された手口がなぜ急にブレイクをしたのか。答えは簡単だ。
総量規制の影響だ(関連記事)。ご存じかもしれないが、2006年の貸金業法改正によって、カネを借りれるのは定期収入がある人で、「年収の3分の1まで」という条件をもうけた。貧乏人ほど借金しなくちゃいけないのに殺す気か、と文句を言ったら、金融庁のおえらいさんは「そういう人はキャベツをかじってて」と相手にしなかった。
だから多くの人が、ヤミ金にすがった。定職についていない人や仕事を失った東北の被災者、そして高齢者……。“最後の頼みの綱”を警察に売る恩知らずはいない。ヤミ金の摘発数は右肩下がりで減っていった。被害額も2012年には最少の109億9000万円まで減少した、と警察庁が得意げに発表したが、なんのことはない、「偽装質屋」に流れていたというわけだ。
昨年2月以降、群馬、愛知、大分、鹿児島などで計11人が逮捕され、被害者は約4300人にものぼる。しかも、5月30日に福岡で摘発された偽装質屋なども、5年間で少なくとも約9600人に約74億円も貸し付けたという。
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