日本経済の成長戦略には規制撤廃しかない:藤田正美の時事日想(1/3 ページ)
安倍政権が期待しているほど、日本経済の先行きが明るくなったわけではない。世界経済にはさまざまなリスクがあり、当然のことながら日本も無縁ではないのだ。
著者プロフィール:藤田正美
「ニューズウィーク日本版」元編集長。東京大学経済学部卒業後、「週刊東洋経済」の記者・編集者として14年間の経験を積む。1985年に「よりグローバルな視点」を求めて「ニューズウィーク日本版」創刊プロジェクトに参加。1994年〜2000年に同誌編集長、2001年〜2004年3月に同誌編集主幹を勤める。2004年4月からはフリーランスとして、インターネットを中心にコラムを執筆するほか、テレビにコメンテーターとして出演。ブログ「藤田正美の世の中まるごと“Observer”」
2013年5月23日に日経平均が7.3%、1140円以上も下落して以来、株価の乱高下が続いている。もっとも乱高下というより「暴落」と言ったほうが実態に近いかもしれない。年初来高値は1万5942円、6月3日月曜日の終値が1万3261円だから、額にして約2681円、率にして17%の下落だ。
理由はさまざまだ。5月23日は、中国のPMI(購買担当者指数)が予想外に下がったことがきっかけだった。月曜日はニューヨーク市場が下げたことがきっかけだった。いずれにしても、投資家が落ち着かない心境であることは間違いない。
ここまでは順調すぎるぐらい順調だった。アベノミクスという言葉ができて、「3本の矢」は1の矢、2の矢と放たれた。円はどんどん安くなって、輸出企業は一息ついた。総選挙で自民党が大勝して以来、上がり始めた株価は、2013年の安値1万399円から50%以上もほぼ一本調子で値上がりした。それだけに、菅官房長官が「調整局面」と言ったのも分からなくはない。
しかし、安倍政権が期待しているほど、日本経済の先行きが明るくなったわけではない。2013年第1四半期の成長率は年率で3.5%となったとき、甘利経済担当相は「アベノミクスの成果が出ている」と言ったが、そう簡単ではない。世界経済にはさまざまなリスクがあり、当然のことながら日本も無縁ではない。それをこの株価の下落が示しているということもできそうだ。
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