日本経済の成長戦略には規制撤廃しかない:藤田正美の時事日想(2/3 ページ)
安倍政権が期待しているほど、日本経済の先行きが明るくなったわけではない。世界経済にはさまざまなリスクがあり、当然のことながら日本も無縁ではないのだ。
米国、欧州、日本――それぞれが抱える爆弾
問題はいくつかある。ひとつは米国だ。FRB(米連邦準備理事会)が現在のQE(量的緩和)をいつ縮小するのか。それをめぐって落ち着かない動きになっている。FRBにしろECB(欧州中央銀行)にしろ、もちろん日銀にとっても量的緩和というのは「非伝統的手段」。そうであれば、経済が回復したら量的緩和は縮小し、ゼロ金利も解除したいと考えるのが普通だ。
FRBのバーナンキ議長は2014年までは量的緩和を続けるとしているものの、経済が本格的に回復基調にあると判断すれば、段階的に縮小していくだろう。そのときには長期金利が上昇傾向に入るが、タイミング次第では「景気の腰折れ」ということもあり、証券市場にとってはリスクとなる。
ふたつ目は、やはり欧州だ。ギリシャに端を発した「ソブリンリスク」は、現在のところ一応落ち着いている。しかしこれで終わったわけではない。
もともとの問題は、ユーロという統一通貨を利用している国が、為替調整という経済の回復手段を欠いていることだ。輸出にせよ、観光にせよ、価格競争力を失った国は為替を調整して競争力を取り戻すもの。統一通貨に加わった瞬間に、その手段が奪われてしまう。ドイツのように強い国は、域内貿易で利益を得られるが、弱い国は強い国から奪われるばかりだ。つまり現在のシステムは常に弱い環が叩かれる構造になっており、基本的に「持続不可能」である。
このシステムを根本的に是正するためには、「富の移転」システムを構築するしかあるまい。要するに「地方交付税交付金」の欧州拡大版ということだ。ただこれを実現するには、強力な政治家のリーダーシップが必要だが、ドイツにせよ、フランスにせよ、今はそれほどの政治力を発揮できる状況にはない。逆に言えば、欧州はいつ危機が再燃してもおかしくはないのである。
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