雇用規制は、緩和と強化の両方が必要(1/2 ページ)
「金銭解決による解雇を認めてしまえば失業者が増える」という反対意見が噴出しています。雇用に関する改革そのものが先送りにされると、成長のチャンスを逃す可能性もあります。
著者プロフィール:川口雅裕(かわぐち・まさひろ)
イニシアチブ・パートナーズ代表。京都大学教育学部卒業後、1988年にリクルートコスモス(現コスモスイニシア)入社。人事部門で組織人事・制度設計・労務管理・採用・教育研修などに携わったのち、経営企画室で広報(メディア対応・IR)および経営企画を担当。2003年より株式会社マングローブ取締役・関西支社長。2010年1月にイニシアチブ・パートナーズを設立。ブログ「関西の人事コンサルタントのブログ」
アベノミクスにおける3本目の矢、成長戦略において、雇用規制の緩和が議論されているのは歓迎すべきことです。企業を元気にするには、金融や税制面での支援、企業活動の自由を縛るような諸々の規制の見直しだけでは不十分で、日本の人材力を生かすための改革が必要だからです。
しかし今のところ、「解雇規制の緩和」ばかりに焦点が当たっており、金銭解決による解雇を認めてしまえば失業者が増える、雇用不安が増すといった反対論が噴出しています。このままいけば、解雇規制だけではなく、雇用に関する改革全体が先送りされるのではないかと危惧しますし、それは成長のチャンスを逃がすことにもつながるだろうと考えます。
「解雇規制の緩和」についていえば、金銭解決による解雇を認めるのは、そう悪いことばかりではありません。まず、理不尽な処遇や扱いを行って、むりやり退職に追い込むような例は減るでしょう。
現在、会社は厳しい要件をクリアしない限り、社員を解雇できないので、自分の意思で退職してもらうしかなく、あの手この手で退職を迫るようなケースもあります。しかし、会社だってそれを好き好んでやっているわけではないので、金銭解決の道ができれば、陰湿な辞めさせ方はしなくなりますし、従業員側もお金をもらって辞めることができます。
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