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なぜ統一球が飛び出したのか? 問われるNPBの隠ぺい体質臼北信行のスポーツ裏ネタ通信(1/3 ページ)

組織ぐるみのウソが発覚し、日本球界が大騒ぎだ。日本野球機構(NPB)が統一球の仕様を変更しただけでなく、「変えていない」と言い張っていたことが発覚したのだ。

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著者プロフィール:臼北信行

日本のプロ野球や米メジャーリーグを中心としたスポーツ界の裏ネタ取材を得意とするライター。WBCや五輪、サッカーW杯など数々の国際大会での取材経験も豊富。


 組織ぐるみのウソが発覚し、日本球界が大騒ぎだ。日本野球機構(NPB)は6月11日、日本プロ野球の試合で使用されている統一球の反発係数を今季から上げて、昨シーズンよりも飛びやすくなっていることを明らかにしたのだ。

 同日、仙台市内で行われた労組・日本プロ野球選手会との事務折衝の場でNPB側が初めて報告。開幕から2カ月以上が経過しているにも関わらず、ここまで重要な事実を明かしていなかったNPBの隠ぺい体質に批判が集中している。

 これまで選手側からは「今シーズンからボールが変わっているのではないか」と多くの指摘を受けていたが、NPBは断固として「変えてない」と否定し続けていた。それが「実は変わっていた」というのだから、とんでもない話。しかもNPBは統一球の製造元であるミズノにも口止めし、球団にも知らせず隠ぺいしていた。開いた口が塞がらないとは、まさにこのことだ。

 NPBの下田事務局長は「知らせることで混乱してはいけないと思ったが、知らせないことで混乱させたかと言われれば、そうかもしれない」としどろもどろになりながら苦しい弁明に終始する。

今シーズンになって、本塁打数が1.5倍に

加藤良三
加藤良三コミッショナーは元外交官(出典:NPB公式サイト)

 NPBの公式使用ボールの統一球は2011年のシーズンから導入。2010年のシーズンまでは各球団が本拠地試合で使用するボールが異なっており「ある球場では本塁打が爆発的に多く出るなど公平さに欠ける」との不満が高まっていたことから、NPBの加藤良三コミッショナーが統一球の必要性を強く訴えて導入に至った。

 「WBCなどの国際試合で使用されるボールは、MLBの公認球とほぼ同じ規格で反発係数が少ない、いわゆる『飛ばないボール』。NPBが導入した統一球も反発係数が低めに設定されていることから、このボールに慣れておけば国際試合で参加選手たちが戸惑うこともほとんどない」とは当時の同コミッショナーの説明。ボールが飛びにくい国際大会での対応を容易にするメリットについても熱弁を振るっていた。

 NPBは反発係数を0.4134〜0.4374と定めたうえ、飛びにくくするためにできる限り下限に近づけるようにミズノへ要請した。同社は球の中心に低反発性素材を使うことで飛距離を抑えることに成功し、その結果、2010年の総本塁打数が1605本だったのに対し、2011年は939本、2012年は881本へと激減したのだ。

 極度な「投高打低」となったことで、打者を中心とした選手が「余りにもボールが『飛ばなさ過ぎる』のではないか」と首をかしげ、ファンからも「ホームランを含めた長打が少ないからプロ野球がつまらなくなった」といった声が一気に高まり、球界のムードは一変する。

 そのような流れの中で、今シーズンの本塁打数は、すでに500本を超えた。2012年シーズンの交流戦時点(6月20日)では331本だったわけだから、およそ1.5倍に増えたのだ。飛ばないはずの統一球が今シーズンから急に飛び出したことで、何らかのメスが入れられたのは誰の目にも明らかであった。

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