トンネルだらけの沖縄新鉄道案は魅力に乏しい:杉山淳一の時事日想(1/6 ページ)
「沖縄本島鉄道計画」が実現に向けて動き出した。沖縄県が実現性を高めるべく検討した結果を発表した。沖縄県民と世界の鉄道ファンが待望する鉄道だ。しかし、内容を見ると、目論見どおりの観光輸送は期待できない。
杉山淳一(すぎやま・じゅんいち)
1967年東京都生まれ。信州大学経済学部卒。1989年アスキー入社、パソコン雑誌・ゲーム雑誌の広告営業を担当。1996年にフリーライターとなる。PCゲーム、PCのカタログ、フリーソフトウェア、鉄道趣味、ファストフード分野で活動中。信州大学大学院工学系研究科博士前期課程修了。2008年より工学院大学情報学部情報デザイン学科非常勤講師。著書として『知れば知るほど面白い鉄道雑学157』『A列車で行こう9 公式ガイドブック』など。公式サイト「OFFICE THREE TREES」ブログ:「すぎやまの日々」「汽車旅のしおり」、Twitterアカウント:@Skywave_JP、誠Styleで「杉山淳一の +R Style」を連載している。
2013年6月5日、沖縄県は「鉄軌道を含む新たな公共交通システム導入促進について」という文書を公表した。那覇空港駅から沖縄県庁・浦添市・宜野湾市(普天間)・うるま市・恩納村を経由して名護市に至る鉄道路線計画だ。路線延長は約69キロメートル。最高時速100キロメートルの電車を走らせて、那覇空港と名護市を約58分で結ぶという。
鉄道の新路線計画というと、従来は計画実現性を高めるために需要見込みを嵩(かさ)上げし、金利負担込みの採算分岐点までは何十年もかかる事例が多かった。しかもフタを開けてみれば利用客は予想を下回り、黒字転換の見通しが立たない……。ところが、沖縄県のプランによると、かなり控えめに需要予測をしても、公設民営方式を採用すれば運行会社は単年度黒字可能という。実現可能性の高いプランになった。
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