アップルやマクドナルドは、本当に“悪の帝国”なのか?:小飼弾×松井博、どこへ行く? 帝国化していく企業(1)(2/5 ページ)
弱体化する国家を尻目に、国境を気にせず自らの利益を追い求める“企業帝国”たち。世界が一握りのお金持ちと圧倒的多数の単純労働者に分かれていくなかで、人々が幸せになる方法はあるのか。小飼弾さんと松井博さんが語り合った。
小飼:1つの意見として、果たして「それって悪いことなの?」というのがあると思います。「赤いクルマか黄色いクルマか」って言うけど、実は庶民がクルマに乗っているなんて、とんでもないことでしょう? 本来は、貴族じゃないとクルマなんて、持てないはずなんですよ。
松井:多くの人がiPhoneを持っていますからね。あんなモノは帝国じゃないとつくれません。一昔前のスーパーコンピュータをみんながポケットに入れて持ち歩いているという現実があって、「帝国はダメだ」と言っていたら、たぶんiPhoneは誕生していないですよね。
小飼:もちろん、先進国の人間だけが中国人を搾取してつくっているというならそれはひどいことだけど、中国人もiPhoneを持っている。それが全世界的に起きているんです。
松井:チュニジアの革命もネットがないと成立しなかったですしね。
小飼:こう言ってはなんですが、国家という暴力装置が別のモノに置き換わっただけですよね。企業は「武器」を売りますが、撃つことはしない。
結局はアメとムチ
松井:その一方で、スティーブ・ジョブズは選挙で選ばれているわけじゃないし、民意を反映している仕組みにはなっていませんよね。それはどうなんでしょう?
小飼:会社も建前としては、株主がBoard of Directors(取締役会)を選んでいるってことになっていますよね。そして、株主の数が増えれば増えるほど、ディレクター(役員)の制約が減るんですよ。これは成長する企業の経営に関わった人であれば皆知ってます。株主が増えると株主同士の声が打ち消しあう。
関連記事
- なぜ給料が二極化するのか? 年収200万円と800万円の人
景気低迷の影響を受け、給料は下がり続けている――。そんなビジネスパーソンも少なくないだろう。では、今後10年間はどうなのか。リクルートで働き、中学校の校長を務めた藤原和博さんに「10年後の給料」を予測してもらった。 - 会社が大きくなって、手にしたモノ、失ったモノ
企業が巨大化している――。背景には「グローバル化に対応するため」といった狙いがあるのだが、こうした流れは私たちの生活にどのような影響を及ぼすのか。ジャーナリストの佐々木俊尚氏とアップルで働いてきた松井博氏が語り合った。 - 何が問題なのか? メディアにころがる常識
メディアが構造的な問題に苦しんでいる――。購読部数の減少、広告収入の低下などさまざまな課題が押し寄せているが、解決の糸口が見えてこない。こうした問題について、ジャーナリストの津田大介氏と社会学者の鈴木謙介氏が語り合った。 - どうすればいいのか? 年収300万円時代がやって来る
景気低迷などの影響を受け、会社員の給料が下がり続けている。低年収時代に会社員はどのように生きていけばいいのだろうか。この問題について、人事コンサルタントの城繁幸さんとフリーライターの赤木智弘さんが語り合った。 - 大企業の正社員、3割は会社を辞める
東日本大震災の発生以降、「今後どのように働いていけばいいのか」と考えるビジネスパーソンも多いのでは。ポスト大震災の働き方について、人気ブロガーのちきりんさんと人事コンサルタントの城繁幸さんが語り合った。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.