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アップルやマクドナルドは、本当に“悪の帝国”なのか?:小飼弾×松井博、どこへ行く? 帝国化していく企業(1)(3/5 ページ)
弱体化する国家を尻目に、国境を気にせず自らの利益を追い求める“企業帝国”たち。世界が一握りのお金持ちと圧倒的多数の単純労働者に分かれていくなかで、人々が幸せになる方法はあるのか。小飼弾さんと松井博さんが語り合った。
松井:株主は自分たちの意見を経営に反映できなくなる、ということですね。
小飼:だから僕は「民主主義だからこそ、帝国が強くなったのではないか」という仮説を持っています。
民主主義になればなるほど経営者が強くなるんですよ。結局、株主が増えれば簡単に株主を黙らせることができるようになるんです。
実はローマ帝国でもそうだったんです。なぜローマ帝国が共和国から帝国になったかというと、戦争で勝っているうちに貴族ではない「市民」が強くなったんです。
でもね、当時のローマ皇帝はいまの米国大統領に近くて政治的にボロを出すと暗殺されちゃうんです。民主化すればするほど、主としての勤めは重くなる。民主主義の主は「責任者」ですから、いざというときに首を差し出す怖い存在です。そんな怖い存在にはなりたくない、というのがほとんどの人の本能のはずです。
結局はアメとムチなんです。「お前にiPhoneあげるからオレたちのことは黙って見ていろ」と言えば、たいていの人は黙るんじゃないかな。企業が出す最強のアメは彼らが出す製品そのものですよね。
松井:「こんなにいい製品を安く買えるんだから、まあいっか」みたいなね。
小飼:そう。付け加えれば、帝国の主たちが売ってる主力製品は特権階級のモノではないですよね。多くの人が使うモノなんです。
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