それはいつか来た道……新たな投資尺度でみる“バブルの証拠”:相場英雄の時事日想(3/3 ページ)
乱高下を繰り返しながらも、東京株式市場の出来高が膨らんでいる。ただ、活況の影で気がかりな事象も現れ始めている。投資家が個別銘柄の売買を決める際の「尺度」について、危うい一面が出始めているのだ。
極論すれば、1人のユーザーが複数のアカウントを保有し、ネット関連ビジネスのサービスを利用したとしても、アカウントそのものが「ユーザー数」として数えられてしまう。仮に、ネット関連企業が自身の「成長」を過剰演出するためにユーザー数を水増ししたとしても、アナリストやその先にいる投資家には正否が分からない。最近、粉飾決算疑惑が伝えられている某携帯コンテンツ企業についても、「“危うい尺度”を使い、企業の実態を膨らませていた公算が大」(別のベテランアナリスト)という一面もある。
私が怪しげな尺度に疑問を投げかけるのは、多くの前例があるからだ。古くは1980年代後半のバブル景気。当時は、日本中の地価が暴騰したタイミングにあった。土地を保有しているというだけで、本業はもうかっていないのに値を上げる銘柄が続出した。この際も「Qレシオ」なる投資尺度が頻繁に利用され、投資家をさかんにあおった。だが、バブル崩壊とともにQレシオは信認を失い、個別銘柄も暴落したのは言うまでもない。
2000年前後のITバブルの時期も同様だ。携帯電話のキャリアのみならず、端末を売るだけのサービス業、はたまた通信網を整備する企業までが“IT銘柄”のくくりでまとめられ、アナリストが積極的に買い推奨を与えていた。このバブルが弾けたことを記憶する若い読者もいるはずだ。
アナリストが新たな尺度をひねり出すときは、バブルが破裂する寸前の状態にあることを、中年の元記者は憂いている。
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