企業帝国の弱点とは? そこで働く人たちの悲哀:小飼弾×松井博、どこへ行く? 帝国化していく企業(2)(5/5 ページ)
莫大な資産を蓄え、世界を支配しつつように見える企業帝国。一方で、社会福祉の増大にあえぎ、弱体する国家はこうした企業に対して何ができるのか。一方で、帝国の中枢で働く幹部は果たして「幸せ」なのか。そして帝国にあった「意外な弱点」とは?
帝国に搾取されているのは軍人
小飼:それにね、血尿にまみれて24時間戦ってるのは帝国軍の人たちなんです。帝国に搾取されている臣民じゃないんです。
松井:そうそうそう! 「なんでこんなに働かなくちゃならないんだ」って(笑)。僕は日本で社畜生活を送っていましたが、周囲の人たちがものすごく働いているので、「自分は普通なんだなあ」と思っていました。で、辞めてみたら「なんか……暇だなあ」っ感じてしまって(笑)。
米国で働くビジネスパーソンって「17時に帰ってワーク&プレイ」というイメージがあるかもしれませんが、「ワーク、ワーク、ワーク」の世界なんですよ。
デジタルコンテンツを配信しているcakesで、連載「そしてみんな『ノマド』になる」を書いているのですが、本当にそのうちみんなノマドになっちゃいますよね。どこでも仕事ができるから、仕事が場所を選ばなくなってきています。その結果って絶対によくなくて、前だったら「失礼しまーす」って帰ったらそこで仕事は終わりだったんだけど、終わらなくなる。
小飼:どこでも仕事できるってのは「どこでも仕事させられます」ってこと。毎日が日曜日だと思ってたら、気が付いたら毎日が月曜日だったみたいな(笑)。
企業帝国の軍人さんで、10年間働く人はゼロではないけど、それだけ働くと心身ともにボロボロになるでしょうね。ゲームにはまっているようなもんですよ。
松井:確かに。アップルで働いていたとき、マネージャーは自分の部署を自分の裁量で好きにできるんですよ。結果さえ出せばいいので、意外に仕事を楽しめる。まるでゲームを楽しむように。すると、辞め時が難しくなってくる。
ちなみに僕は、会社を辞めたあとすぐにiPhoneを息子にあげました。だんだん憎らしくなって……「これがあるが故につながってしまうんだ!」と。(笑)
小飼:アハハハ。勲章かと思ったら首輪だったわけですね。
(つづく)
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