先進国にとっての労働は「暇つぶし」なのか:小飼弾×松井博、どこへ行く? 帝国化していく企業(3)(1/4 ページ)
モノ余りの時代、必要とされるサービスは先進国ではほぼ提供されている。人々は何のために「働く」のか。労働の意味とは何か。一方でまだ残る貧困をどう解決していけるのか。
どこへ行く? 帝国化していく企業:
アップルやマクドナルド、グーグルなどのグローバル企業は、いまや落ち目になった国家を尻目にどんどん強大になっている。低税率国の子会社を使った租税回避を行っていたり、低賃金で労働者を搾取し、法律を自分の都合のいいように変えるなど、やりたい放題やっているように見える。
一方で、先進国の中間層は没落し、多くの人がグローバル化の名目のもと、時給で働く労働力として使われ始めている。民主主義はもはや機能していないのだろうか。人々が幸福になれる未来は来るのか。
書評を中心としたブログを運営しアルファブロガーとして知られる元技術者の小飼弾さんと、元アップル管理職の松井博さんが語り合った。全7回でお送りする。
→アップルやマクドナルドは、本当に“悪の帝国”なのか?(1)
→本記事、第3回
食料もエネルギーも実は余っている!?
小飼:いまの時代、どういう試算をしてもカネもモノも足りているんです。人類が食べる分としてつくっているバイオマス(生物体量)だけで、年間約40億トンもあるんです。そしてその半分くらいが廃棄される。もったいないですよね。実は25億トンもあれば、万々歳なんです。
あとは分配手段がないだけなんですよ。いまだ生きるか死ぬかの貧困は残ってますから、そういう状態は早急になくしておきたいですよね。
20世紀の最大の発明は何か? この質問に対して、いろいろな議論があるのですが、僕は薬剤耐性を持つ小麦や稲だと思っています。そういえば、松井さんの著書にもモンサント(米国のミズーリ州に本社があるバイオ化学メーカー)の話が出ていましたね。
松井:僕は「モンサントが悪い」とは、書けませんでした。なぜかというと、マクドナルドの安いハンバーガーは、モンサントなしにはできませんので。
小飼:ただ、穀物がらみの話はエグいですねえ。
松井:本にも書いたのですが、ロサンゼルスとサンフランシスコの間にフィードロットという、牛の飼育場があるんです。クルマで時速110キロくらいで走っていても、風景は15分ほど変わりません。それほど大きいのですが、クルマの窓を閉めていてもくさいんです。
「この強烈なニオイ……ちょっとおかしいだろう」と思って調べてみたところ、びっくりしました。地面は茶色なので大地だと思っていたら、それは牛の糞尿でした。そりゃあくさいはずだ、と。でも、こうしたところがあるから、僕たちは安いハンバーガーを食べることができる。あの街に住んでいる人たちのニオイに対する耐性は、ものすごいなって思いますが……。
牛の糞尿の量を知ったとき、これを活用するのは大変だろうなあと思いました。ものすごい数の牛を飼っているから、どんどん糞をする。肥料にするにも限界がある。ただそのままにしておくとO−157が増える。
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