先進国にとっての労働は「暇つぶし」なのか:小飼弾×松井博、どこへ行く? 帝国化していく企業(3)(3/4 ページ)
モノ余りの時代、必要とされるサービスは先進国ではほぼ提供されている。人々は何のために「働く」のか。労働の意味とは何か。一方でまだ残る貧困をどう解決していけるのか。
餓死するほど貧乏で、国が買えるほど金持ち
松井:今の世の中は結局のところ「娯楽社会」で、みんな単純に働きたいから働いてて、本当になくて困るものを生産している人って少ない。ちょっと前まではiPhoneがなくても普通に生きていましたよね。
いま生産しているほとんどのモノって娯楽でしかない。面白おかしく生きる社会というか、暇つぶしですよね。
小飼:暇つぶしの一環として、“社畜ゲーム”に加わるという感じですよね。社畜でも戦士でもいいけれど、ゲーム感覚でないと付き合いきれない。
松井:アップルを辞めて思ったのは「仕事って遊びなんだ」ということ。当時はリアリティを持っていたのに、辞めてみると「ああいうことを本当にやってたんだ、オレって」と思う。
僕はものすごく働いていたのですが、それで何を得ているかというと、ほかの人とほとんど変わらない。友だちでバスの運転手がいますが、彼の息子もiPhoneを持っているし、クルマも持っている。「あれ? 何も差がないじゃないか」と。
彼と僕の何が違うかというと、多少家が広いとか多少クルマがいいとか、その程度なんですよ。自己満足的にポルシェに乗るか、それともカローラで済ませるか、といった違いはあってもやれることにはなんら差がない。
結局のところ、“ゲットリッチゲーム”をやってただけという気がしますね。「オレはこんなに稼いだぞ」って。ゲームのスコアがお金だって感じです。「生きる」って暇つぶしの感覚に近い……だったらなるべく面白い遊びをやろうと。
小飼:でも「それでいいじゃん」って言うためには、いまだに世界に残っている貧困問題は解決しておきたいですよね。そうでないとやっぱりゲームをするときに、後ろめたいし、後ろ指さされるでしょう? 貧困を撲滅するゲームというのはとっととクリアしておきたい。
松井:そうですよね。本当の貧困は、きっちりクリアしなければいけません。
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