10年後に150万円所得増は実現できる!?――成長戦略に見る政府の方針:世の中の動きの個人資産への影響を考えてみる(1/3 ページ)
安倍内閣の成長戦略の見通しで「10年間で150万円所得を増やす!」という内容が発表されました。われわれの所得は、10年後、本当に150万円も増えるのでしょうか? 計算してみました。
今回は政府の成長戦略について考えます。大きな方針はようやく見えたのでしょうか? 先日、安倍内閣の成長戦略の見通しで「10年間で150万円所得を増やす!」という内容が発表されました。
10年で所得150万円増、国家戦略特区新設
日本経済再生に向けて、政府は14日成長戦略を閣議決定した。対象地域を絞って規制緩和する「国家戦略特区」の創設や大衆薬のインターネット販売の原則解禁などを通じ、10年後に1人当たり国民総所得(GNI)を現在の水準から150万円以上増やす目標を掲げた。
(2013年6月15日付 産経新聞)
「150万円所得増」って本当に達成できるの?
この閣議決定を受けたマスメディアの論調は軒並み否定的でした。
目標達成は容易でなく、成長戦略でどうGNIを引き上げていくのか、具体的な道筋を示すことが求められる。
(日本経済新聞)
150万円増のハードルは高い。平成24年度の1人当たりのGNIは384万5千円。これを10年後に150万円以上増やすには、年率3%超のペースの拡大が必要。
(読売新聞)
有識者は「企業の生産性が飛躍的に向上したり、輸出環境の大幅な改善など劇的な変化がなければ達成は難しい」と分析。
(産経新聞)
などなど。
おおむね「そんな水準の成長は無理」、そして「具体策がない!」という評価でした。確かにそうですね。閣議決定された経済財政運営と改革の基本方針を読みましたが、具体的な施策に関するところはぼんやりしていて、成長実現の道筋はよく分かりませんでした。
でも、この発表を聞いて「達成できるかどうか」ではなく「方針が見えるかどうか」という点で、わたしは妙に納得してしまいました。
今まで政府は「GDP名目成長率3%、実質成長率2%を目指す」と言ってきました。これを今回は「1人当たりのGNI(Gross National Income:国民総所得)を10年で150万円増やす!」と言い換えました。これは単なる言い換えのようで実はそうではありません。
これで政府の方針はかなり分かりやすくなったと思います。そしておそらく「GDP(Gross Domestic Product:国内総生産)名目3%実質2%成長」よりは「1人あたりのGNIを150万円増やす」の方が達成しやすそうです。
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