「ベーシックインカム」は人間を幸せにするのか:小飼弾×松井博、どこへ行く? 帝国化していく企業(4)(3/5 ページ)
国の機能があいまいになる中、「ベーシックインカム」に注目が集まっている。国民の生活を、最低限の現金を配ることによって保証しようとする考え方だが、民主主義の方向としてアリなのか?
日本には“隠れた税金”が多い
松井:年金や高速道路の料金なども一種の税金ではないでしょうか。日本って隠れた税金……つまり「税金」って名前が付いてないけど、実は「税金」っていうのが多いんです。
小飼:多いですね。税収が40兆円しかないのに、なぜ国家予算がその倍あるのかというと、社会保障の名目で取っているお金は、税金よりも多いんです。国の懐に入るのは120兆円ほどですが、年金として配っているのが約80兆円、そして残りが約40兆円。そういう意味では、国家財政って破たんしていないんですよ。
松井:米国で社会保障年金を「ソーシャルセキュリティタックス」と言いますが、「確かにタックスだよな。日本は『年金』なんて呼ぶなよ」と思うわけです。米国の高速道路は無料ですが、日本の高速道路料金も税金ですよね。
小飼:これは国に限った話じゃないですが、料金の取り方が細かいんですよ。例えば、電車の料金も細かい。鉄道の料金算定プログラムって10の40乗くらい組み合わせがあって、それがきちんと動くので「スゴいなあ」という人がいますが、むしろ、なんでそんなに細かく設定するのかと思いますね。
料金という点で、もっとも偉大な発明は英国の郵便料金だと思っています。全国同一料金にしちゃったんですよ。料金設定の仕方そのものは設計であって、デザインなんですよ。
松井:賛成です。あと今の税制は抜け穴が多すぎますよ。
小飼:なぜベーシックインカムの話をしたかというと、これを導入すると抜け穴を少なくすることができるから。一方、なぜいまの税制は抜け穴が多いかというと、累進課税だから。累進にすると、節税という努力が報われてしまうんですね。なにがあろうと2割は税金ということにすれば、節税の甲斐がなくなるでしょう。
松井:自分で会社をつくると、税金から逃れる手段を学ぶんですよ。サラリーマン時代にはなかったツールが増えて、節税できるから努力してしまう。この努力って社会的に考えたら無駄ですよね。いい製品とかサービスつくるほうに努力したほうがいいですよ。
関連記事
- アップルやマクドナルドは、本当に“悪の帝国”なのか?
弱体化する国家を尻目に、国境を気にせず自らの利益を追い求める“企業帝国”たち。世界が一握りのお金持ちと圧倒的多数の単純労働者に分かれていくなかで、人々が幸せになる方法はあるのか。小飼弾さんと松井博さんが語り合った。 - なぜ給料が二極化するのか? 年収200万円と800万円の人
景気低迷の影響を受け、給料は下がり続けている――。そんなビジネスパーソンも少なくないだろう。では、今後10年間はどうなのか。リクルートで働き、中学校の校長を務めた藤原和博さんに「10年後の給料」を予測してもらった。 - 会社が大きくなって、手にしたモノ、失ったモノ
企業が巨大化している――。背景には「グローバル化に対応するため」といった狙いがあるのだが、こうした流れは私たちの生活にどのような影響を及ぼすのか。ジャーナリストの佐々木俊尚氏とアップルで働いてきた松井博氏が語り合った。 - 何が問題なのか? メディアにころがる常識
メディアが構造的な問題に苦しんでいる――。購読部数の減少、広告収入の低下などさまざまな課題が押し寄せているが、解決の糸口が見えてこない。こうした問題について、ジャーナリストの津田大介氏と社会学者の鈴木謙介氏が語り合った。 - どうすればいいのか? 年収300万円時代がやって来る
景気低迷などの影響を受け、会社員の給料が下がり続けている。低年収時代に会社員はどのように生きていけばいいのだろうか。この問題について、人事コンサルタントの城繁幸さんとフリーライターの赤木智弘さんが語り合った。 - 大企業の正社員、3割は会社を辞める
東日本大震災の発生以降、「今後どのように働いていけばいいのか」と考えるビジネスパーソンも多いのでは。ポスト大震災の働き方について、人気ブロガーのちきりんさんと人事コンサルタントの城繁幸さんが語り合った。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.