鉄道紀行のカリスマが夢見た「富士登山鉄道」とは:杉山淳一の時事日想(3/6 ページ)
富士山の世界文化遺産登録が決定した。「富士登山鉄道」はいまだ構想段階で具体案はこれから……といった感じだ。しかし、いまから約20年前に「富士山鉄道・五合目線」を発表した作家がいた。鉄道紀行作家、宮脇俊三である。
起点は富士急ハイランド駅
宮脇俊三氏は「富士山鉄道・五合目線」の起点を富士急ハイランド駅とした。「中央自動車道の西側の盛土にそって線路を敷けば、用地取得の苦労も少ないだろう」とある。富士急行と直通運転するため、軌間は1067ミリメートルとし、電圧は1500Vとする。次の駅は「インターチェンジ」そこから「富士スバルランド」までは複線とし、以降は単線で富士山五合目まで単線の線路を敷く。
富士スバルラインを転用すれば複線もできる。しかし、道路の半分だけ線路として、余った部分は植樹して自然に返そうという案である。宮脇氏は言及していないが、この方式なら、鉄道建設期間中も1車線でバスを使った輸送ができる。
単線でも列車の運行を増やすために、駅と信号場を増やす。信号場は旅客扱いをしない設備で、列車のすれ違いだけを実施する。JR北海道の石勝線や、神奈川県の江ノ電の駅間でも見かける方式だ。「富士山鉄道・五合目線」の駅は起点の富士急ハイランドを含めて10カ所。信号場は4カ所。両端駅を除くと、中間に12カ所のすれ違い場所ができる。江ノ電なみの12分間隔を想定している。
宮脇氏が設定した駅と信号場は次の通り。( )は信号場だ。
富士急ハイランド―インターチェンジ―富士スバルランド―別荘村口―(剣丸尾)―(一合目)―(丸山)―聖母像展望台―(三合目)―幸助山―大沢展望台―奥庭口―奥庭―五合目
五合目の手前、奥庭は付表では「御庭」、付図では「奥庭」と記載されていて、本文では言及されていない。奥庭口が隣にあり、「口」は入口を示すだろうから、これは「奥庭」が正解だろう。
関連記事
- 鉄道ファンは悩ましい存在……鉄道会社がそう感じるワケ
SL、ブルートレイン、鉄道オタク現象など、いくつかの成長期を経て鉄道趣味は安定期に入った。しかしコミックやアニメと違い、鉄道ファンは鉄道会社にとって悩ましい存在だ。その理由は……。 - 「青春18きっぷ」が存続している理由
鉄道ファンでなくても「青春18きっぷ」を利用したことがある人は多いはず。今年で30周年を迎えるこのきっぷ、なぜここまで存続したのだろうか。その理由に迫った。 - なぜ新幹線は飛行機に“勝てた”のか
鉄道の未来は厳しい。人口減で需要が減少するなか、格安航空会社が台頭してきた。かつて経験したことがない競争に対し、鉄道会社はどのような手を打つべきなのか。鉄道事情に詳しい、共同通信の大塚記者と時事日想で連載をしている杉山氏が語り合った。 - JR東日本は三陸から“名誉ある撤退”を
被災地では、いまだがれきが山積みのままだ。現在、がれきをトラックで運び出しているが、何台のトラックが必要になってくるのだろうか。効率を考えれば、鉄道の出番となるのだが……。 - あなたの街からバスが消える日
バスは鉄道と並んで、地域の重要な移動手段だ。特にバスは鉄道より低コストで柔軟に運用できるため、公共交通の最終防衛線ともいえる。しかし、そのバス事業も安泰ではないようだ。 - なぜ「必要悪」の踏切が存在するのか――ここにも本音と建前が
秩父鉄道の踏切で自転車に乗った小学生が電車と接触して亡くなった。4年前にもこの踏切で小学生が亡くなっている。なぜ事故は防げなかったのか。踏切に関する政策を転換し、「安全な踏切」を開発する必要がある。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.